脅されて不倫を続けた挙句、800万円を支払うハメに… 転落した41歳男性の “最後の希望”は
1週間の猶予
彼は同僚のツテを頼って、弁護士を紹介してもらった。相談してみると、確かに多すぎるけど、あなたは何を望んでいますかと尋ねられた。お金を払っても妻には内緒にしたいのか、いっそ妻にすべて話して許しを乞い、裁判で慰謝料の額を決めるのか、あるいは脅迫だとして逆に玖美さん夫婦を訴えるのか。さまざまな選択肢があるとアドバイスされた。
「玖美夫婦に会ったとき、途中から僕はスマホの録音ボタンを押したんです。玖美だけだと思って会いに行ったけど、玖美が理不尽なことを言ったら録音しようと思っていたから。夫婦して明らかに脅しの言葉を発していましたね」
1週間、時間をくれと玖美さんに言った。そしてついに鞠絵さんにすべてを話した。母親とふたりで過ごした境遇のことも会社から借金していたことも、玖美さんとの関係も。玖美さんがかつての恋人だとは言わず、たまたま知り合って誘惑されたと、それだけは嘘をついた。その夫が仕事関係の知人だったのは偶然だったとしらを切り通した。
「鞠絵は取り乱したりはしませんでした。あなたには何か秘密があると思っていた、そういうことだったとはねと少し呆れたような感じでした。『とにかく私はあと数ヶ月で子どもが産まれるの。どうするつもりなの?』って。ショックというより怒りだったんでしょうね、顔は冷静だったけど、手が震えていました」
そして鞠絵さんは、そのまま体調を崩し、切迫早産の危険があるとして入院加療を余儀なくされた。修汰さんは、怒りにまかせて玖美さん夫婦に「裁判でもなんでもすればいい。妻と子に何かあったら、あんたたちのせいだから」と伝えた。
追い詰められた修汰さん
鞠絵さんは1ヶ月の絶対安静を経て、そのまま実家へと帰っていった。今後のことは何も話せなかった。修汰さんは不安だったが、自分から鞠絵さんの実家へはなかなか足を運べなかった。
「そうこうしているうちに玖美の夫が、僕の勤務先にすべて話してしまった。例の親切な上司に呼ばれて、『おまえがそういうヤツだとは思わなかったよ』って。美人局なんですよ、騙されたんですと言ったけど、『彼女とは学生時代からのつきあいだったんだろ。つきあっていながら結婚したのか』と。先輩は妻の上司でもあったわけだから、そりゃあ怒りますよね。周りも今までとは違う目で僕を見るようになっていくのがわかりました」
結局、その上司が間に立ってくれて、玖美さん夫婦に300万を払うことで示談とした。彼は会社にはいられなくなって退職するしかなくなっていた。同時に妻からは離婚届が送られてきた。
「カードでめいっぱい借金して妻には慰謝料と養育費の前払いとして500万払いました。キャッシング後、すぐに退職したので返済もできません。住んでいたマンションは会社の借り上げだったので出なくてはいけない。スーツケースひとつで漫画喫茶などを転々としました」
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