奨学金が原因で「6年交際」した彼女と破局… ようやく叶った“復縁”は想定外の形だった

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先輩からの助け舟

 同僚と飲みに行くことさえ月に1度がせいぜいだった。だがそれほど経済的にキツいと悟られたくはなかったから、ときにはカードでキャッシングをしてしのぐこともあった。そうすればさらにキツくなるのはわかっていたが、どうにもならなかった。

「彼女は怒って去っていきました。学生時代から6年つきあったし、僕にとっては初恋の相手でしたから、彼女のいなくなった人生はぽっかり穴があいてしまった。それでもただひたすらお金のためにがんばるしかありませんでした」

 残業は自ら買って出た。残業代がつくからだ。あるとき、同じ部署の先輩から声をかけられて食事に行った。入社して丸3年、よくがんばってるなと褒められたものの、先輩の意図は、修汰さんがあまり同僚や先輩と交わろうとしないことを心配してのものだった。

「ふっと気が抜けたんでしょうか。信頼できる先輩だと思ったから、すべて話してしまいました。先輩はじっくり聞いてくれた。『オレに何かできるわけじゃないけど、会社に話して奨学金分を借りてしまう手もある。金利なしで話をつけてやるよ』って。鷹揚な時代でしたね、というかうちの会社がけっこう鷹揚なのかもしれないけど。話したらかなりすっきりして、物事がまっすぐ見えてきた。貧すれば鈍するって本当なんですよね。貧しくていじけて、彼女に対してもつらく当たってしまったんだとよくわかった」

 その後、先輩は彼をともなって会社の総務や人事にかけあってくれ、ほぼ無利子で借りることができ、繰り上げ返済は完了した。それどころか部長クラスの上役たちがカンパまでしてくれたのだ。その気持ちがうれしかった。この会社と上役、先輩たちのために必死で働こうと彼は決めた。

28歳になって、思ったことは…

「ようやく先が開けた気がしました。28歳になっていましたね。玖美と結婚しようと言っていた年齢だと思うと、彼女への未練が出てきて。現金なものですよね。嫌いで別れたわけじゃない。彼女のいいところばかりが思い出されて……。僕は就職してから、学生時代の友だちにもほとんど会っていなかったので彼女の動向も知らなかったんです」

 連絡をとりたくてたまらなかったが、それだけはできないと自分を抑えた。今は仕事のことだけを考えようとがんばってみた。

 だが30歳になったころ、1度だけと思って連絡をとってみると、彼女は「久しぶりね。会いたい」と言ってくれた。数年ぶりに会う彼女は輝いて見えた。もう一度、やり直したい。心底からそう思った。気持ちが高ぶってホテルに誘うと彼女は、私はそんな安い女じゃないのよと微笑んだ。

 だからこそ彼は彼女に夢中になった。時間があると彼女に連絡をとって口説いた。やり直したいんだ、と。2年越しの思いがかない、とうとう彼女をホテルに誘い込んだ。

「玖美は昔よりずっと成熟していて、僕がついていけないほど乱れて……。ことが終わると、彼女は『私、実は結婚してるんだ』と。僕はびっくりして、先に言ってくれればこんなことにならなかったのにと言いました。すると彼女は『いいのよ、夫だって不倫しているんだから』って。そんな夫婦関係でいいのかと思わず言うと、あなたに言われたくないわって」

 玖美さんの夫は大手企業の役員の息子だという。就職した会社の上司に紹介され、「本人は可もなく不可もない感じの人だったけど、親御さんに気に入られて結婚しちゃった」と玖美さんは軽い調子でつぶやいた。

「彼女の実家だってそれなりに裕福だったはずなのに、もっと高みを目指したのよと笑っていました。あなたと一緒に苦労したかったけど、あなたはそれを拒否した。だったら愛なんてなくてもいいから、楽して暮らせる生活がほしかったのって。なんだか虚しかった。そんな女性じゃなかったはずなのに。そうさせたのはオレなのかというと、『私の人生は私のもの』と言われました」

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