奨学金が原因で「6年交際」した彼女と破局… ようやく叶った“復縁”は想定外の形だった

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【前後編の前編/後編を読む】脅されて不倫を続けた挙句、800万円を支払うハメに… 転落した41歳男性の “最後の希望”は

 人生、まっとうに歩んでいたはずなのに、どうしてこんなことになってしまったのか……。後悔しても始まらないし、「悪いことをしたわけじゃない」と自分を慰めても時間は元には戻らない。

 藤沢修汰さん(41歳・仮名=以下同)は、「この半世紀、オレは何をしてきたのか」と日々考えているという。だがもちろん、答えは出ない。そのときそのときを必死で生きてきただけなのだから。

 地方出身の修汰さんは、奨学金を借りて東京の大学に進学した。中学生のころ両親が離婚して母の実家を頼ったが、祖父母がすぐに他界し、あとをとった母の兄一家は修汰さんたちを邪険にした。実家の物置だった場所を片づけて、母と修汰さんはそこで暮らした。母親が働く場は限られていた。近所の農作業を手伝ったり、自転車で30分もかかるスナックでアルバイトをしたり。

「今どきそんな暮らしがあるのかという感じでした。伯父一家も生活が楽ではなかったんでしょう。子どもが3人もいたし。それでも伯父は多少、母のことを心配して様子を見にきていたけど、奥さんが怖かったらしくて。子ども心に、こんな家は早く出ていきたいと思っていました」

仕送りと、奨学金の返済

 上京するとき、一緒に行こうと母を誘った。だが母は「私はここでいい。あなたは将来がある身なんだから、ひとりでがんばりなさい」と言った。彼はせっせとアルバイトをして母に毎月、数万円を送り続けた。ひとり息子と離れたせいか、母が病気がちになったと伯父から聞いてきたので、せめてちゃんと食事をしてほしいという思いをこめていたのだ。

 大学を出て就職すると、奨学金返済が待っていた。返済額は毎月3万弱、それが18年続くのは、わかっていたことだがつらかった。

「学生時代と同じおんぼろアパートに住み続け、なるべく早く返そうと思いました。そうしないと結婚もできないですから」

 彼は学生時代、同期の玖美さんとつきあっていた。当時は無邪気に28歳くらいになったら結婚しようと言っていたのだが、実際に働き始めると「とても結婚どころじゃない」と実感した。

「奨学金を借りていることは話していましたが、東京で生まれ育って実家がそこそこ裕福な彼女には実感がなかったみたい。就職して3年たったころ、僕の部屋に来た彼女が、『ねえ、いいかげん、ここから越したら? もう就職して3年たってるんだし、引っ越し費用くらいあるでしょ』って。でも僕は借金返済しつつ、母にも仕送りを続けていたから、実はどうにもならないくらい貧乏だったんですよ。20代の給料で自由に使えるお金は5万くらいしかなかった。それが全生活費。貯金もできない」

 だが、そこまで詳しいことは見栄もあって言えなかった。借金はふたりで返せばいいんだから、結婚しようよと言った彼女に、彼は「別れよう」と言ってしまった。住む世界が違う、オレは一生、裕福にはなれないとつぶやいた。

「彼女は、どうしてよと泣きました。転職くらい考えてよと言われたけど、勤務先の中堅企業は、給料は高くないけど社風や人間関係がすごくよかったので転職する気はありませんでした。30代半ばくらいから40代になれば、世間一般の暮らしはできそうだし。ただ、そこまで待てないだろと言うと、『うちの親がなんとかしてくれるから』って。そういう親頼みの姿勢も嫌だった。とにかく彼女の無邪気さが僕を傷つけているのに、彼女自身がそれに気づいていないところが我慢できなくなっていたんです。今思えば、それも僕のエゴなんでしょうけど、あのときは自分のことさえ考えたくなかったから彼女の気持ちを想像することはできなかった」

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