「場当たり的な経済政策ばかり」「ブレーンの顔ぶれにも疑問符」明治大・飯田泰之教授が語る石破政権の不安材料

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 石破茂総理が誕生したかと思えば、早くも総選挙の公示日を迎えた。未だに裏金問題が尾を引き、新政権をとりまく環境は不安材料ばかりだが、特に懸念されているのが経済政策だ。金融、財政政策に関する発言も二転三転する中、新首相が舵を取る日本経済は今後、どこへ向かうのか。明治大学政治経済学部の飯田泰之教授にきいた。

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 新政権発足直後に報じられた読売新聞と日本テレビによる世論調査によれば、石破茂内閣の支持率は、岸田政権発足時を5%下回る「51%」という数値だった。人事から早期の解散宣言まで、石破首相の一挙手一投足に疑問符がつく状態で、まさに前途多難な船出となっている。

 それゆえに国民から案じられているのが、日本経済の行方だ。総裁選では“引き締め路線”をちらつかせていた石破首相である。決選投票前後のいわゆる“高市トレード”“石破ショック”もあり、今後の展望に、大きな注目が集まっているのである。

「石破首相からはマクロな経済政策が見えてこず、何をしようとしているのかがよくわからない、というのが正直なところです」

 そう指摘するのは、明治大学政治経済学部の飯田泰之教授だ。

「総裁選では、たとえば高市早苗氏には『日本経済を強くしたい』という目的があったので、『製造業拠点の国内回帰』『需要を喚起するための低金利、円安』という主張につながる。小泉進次郎氏も『規制によって成長が妨げられている』との考えから、解雇規制緩和などの必要性を訴えていたわけです。内容の賛否は別として、石破首相にはこうした“大目標”や“現状認識”がなく、『金融所得課税を強化したい』などと場当たり的な政策ばかり。そこにストーリーがないからこそ、発言がコロコロ変わってしまうのだと思います。あれだけ否定的だったのに、首相に就くや否や解散を表明した姿勢は経済政策でも同じかも知れません」

「掴みどころのない“うなぎ”」

 選挙戦で垣間見えた金融や財政の“引き締め路線”も、当面は叶わないだろうと飯田教授は見る。

「そもそも党内基盤の弱さが指摘されていた上、総裁の座を争った他の候補者には“報復人事”ともとれる扱いをしている。いくら首相肝いりの政策があったとしても、まず党内の合意を形成するのが非常に困難な状況です。金融所得課税の強化や法人税、消費税の引き上げなど、“石破色”が出るような政策は、とても実現できる状況ではありません。このような背景もあり、良くも悪くも、岸田政権の路線がそのまま継続されるようになったのだと思います」

 所得の再分配など、反資本主義的な姿勢がマーケットから警戒されていた石破首相である。それだけに、この「石破色を出せない状況」は、ある意味で安心材料になっている面もあると飯田教授は言う。しかし一方で、

「経済政策に大局観がなく、また発言に一貫性がないことによる『不確実性』が高まっています。さらに、いくらマーケットフレンドリーではない石破首相とはいえ、党内事情によって重要政策を打ち出せない状況が続くことは、中長期的な目線で見るとやはり日本経済にとって大きな不安材料と言わざるを得ません。我々学者からしても、批評しようにも対象となる政策が出てこないという、なんとも掴みどころのない状況が続きそうです。立憲民主党の野田佳彦代表が『どじょう』なら、石破首相は『うなぎ』とでもたとえられるでしょうか」

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