6歳で「小学校に行かない」と決めて何が起きたか 校長と教委がやって来て…両親の反応は

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 文部科学省の調査によれば、2022年度に不登校と認められた小・中学生は全国に29万9000人。年間30日以上欠席している「長期欠席者」も含めると46万人もの子どもが学校に「行けない」あるいは「行かない」状況で、「クラスに1人以上」という計算になる。そうしたなか、異色の経歴を持つ26歳の作曲家・内田拓海氏に注目が集まっている。内田氏は6歳から15歳までの9年間、小・中学校に1日も通学せずに、東京藝大に合格。本人は「不登校でも意外と大丈夫」と語るが、内田氏が「選択的不登校」に至った過程とは――?

(前後編の前編)

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※この記事は、『不登校クエスト』(内田拓海著、飛鳥新社)の内容をもとに、一部を抜粋/編集してお伝えしています。

6歳で確信した「小学校には行かないほうがいい」

 保育園での別の児童とのトラブルについて、先生から納得のいかない対応をされたことがきっかけで、通園をやめた私。保育園に行かなくなってからは、自宅で絵を描いたり公園に遊びに行ったり……と自由に楽しく生活をしていました。

 そんな6歳の冬のある日だったと思います。「こういうのが来たよ」。母はそう言いながら、私に1通のハガキを見せてくれました。市役所から送られてきた入学通知書でした。《ご入学おめでとうございます!》と、お祝いの言葉が添えられていたのを、よく覚えています。

「来年から小学生だって。どうする?」。「どうする?」というのは、言うまでもなく「小学校、行く?」という意味です。一般的に考えれば、小学校に行くも行かないもありません。基本的には誰もが行くものであり、親が子どもにわざわざ意思確認すること自体、なかなかないでしょう。

「どうする? 行く?」「いや、小学校には行きたくない」。私は、まったく迷うことなく即答しました。

「えっ! 本当に行かないの?」。私の言葉に母は少し驚きながらも、その後、「小学校に行かせる」か「本人の意思を尊重する」か、父と話し合ったそうです。

 母に当時の話を聞くと、「“学校に行かない”と言うかもしれない」という予感はあったと言います。当時、私は6歳。世の中のことを何ひとつ知らない子どもでしたが、「行かない」と断言できるくらい、私の中には確信めいたものがありました。

「小学校は行かないほうがいいだろうな」「自分にとっては、行かないほうがいいところだ」。保育園での出来事も、少なからず影響していたとは思います。

まさかの学籍消滅で「存在しない子」に

「小学校には行かない」と家族で決めたのは良かったのですが、そう小学校に返事をすると、すぐに教育委員会の担当者と小学校の校長先生が揃ってわが家に飛んで来ました。

 2000年代の始め頃(現在もかもしれませんが)、「入学もせず1日も通わない」という子どもやそれを容認する家庭は、かなりレアケースだったのかもしれません。教育委員会の方や校長先生としても、驚いたのも無理はありません。

 両親が学校側と話し合いをしている間、私は別の部屋で遊んでいたことを覚えています。学校側は、「拓海君を小学校に通わせるように」と、なんとか両親を説得しようとしたのでしょう。

 でも、今度は両親が首を縦に振りません。「本人が“行かない”と言っているので」。先ほども書きましたが、父も母も教育の専門家でもなんでもありません。何か確固たる信念や、確信があったわけではなかったと思います。それでも自分の子どもの言葉や感覚を信じてくれたのです。

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