川口市のクルド人の来日目的は「就労と家族統合」 クルド人自身が「弟は難民じゃなくて移民」

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深刻化する前に手を打たないと……

 日本の人手不足は深刻な問題で、解体業などで仮放免中のクルド人たちが働いている現実がある。彼らがいったん帰国し、新設の「育成就労制度」などを通して合法的に正面から入国し、日本語と仕事のスキルを学ぶのを支援するなら、互いにとってウイン・ウインとなり得ます。

 川口のクルド人問題がさらに深刻化する前に手を打たないと、移民や難民に関する日本社会の拒否反応が大きくなります。

 新聞やテレビなどのメディアは世論に対して大きな影響力を持ちます。「かわいそうなクルド人」だけでなく、地域住民の不安の声をしっかり聴くと共に、トルコ本国での取材も含め、バランスの取れた建設的な報道を行うべきです。

 それが川口市のクルド人問題の解決と、外国人との「共生社会」への道の第一歩だと考えます。

 前編【「僕自身がクルド人だが、トルコで迫害はない」 川口市に集まるクルド人は本当に難民なのか? 「マスメディアの報道は現実と乖離」】では、トルコ人への取材から、日本のマスメディアが報道している内容が実態に即していない問題について報じている。

滝澤三郎(たきざわさぶろう)
東洋英和女学院大学名誉教授。1948年、長野県生まれ。東京都立大学大学院修了後、法務省に入省。以後、国連ジュネーブ本部やUNRWAなどに勤務し、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)では駐日代表等も務める。東洋英和女学院大学の教授を経て、現在は名誉教授。

週刊新潮 2024年10月10日号掲載

特別読物「彼らは可哀想な『難民』ではない 埼玉・川口市『クルド人問題』の深層」より

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