川口市に集まるクルド人は本当に難民なのか? 「僕自身がクルド人だが、トルコで迫害はない」
先進国で相次いで起こる難民排斥運動
UNHCRの調査によれば、現在、世界で移動を強いられた難民や避難民の数は約1億2000万人。日本の人口と同じくらいですから、莫大な数です。その数だけ悲劇がある。
理由は、戦争や国内紛争の激化です。シリア、ミャンマー、アフガニスタン、ウクライナ、ガザ地区といった国や地域で、多数の難民や国内避難民が発生しています。
シリア難民などは2015年以来、ドイツに110万人流入し、中南米諸国からアメリカへは数百万人の難民・移民が。アメリカ・メキシコの国境では、年間で250万人が不法入国を図って拘束されています。
これほどの難民・避難民が流入するがゆえに、先進国では難民の排斥運動が相次いで起こっています。今年に入り、イギリスでは不法移民法が成立し、難民申請者のルワンダへの強制移送計画も持ち上がった。これは労働党が政権を取って中止しましたが、アメリカの大統領選でも移民問題が大きなテーマとなっているのは周知の通りです。
「難民鎖国」は終わった
日本の状況はどうでしょうか。
昨年、日本で難民申請した人の数は1万4000人。世界では360万人ですからごくわずかです。もともと日本は紛争地から遠く、日本語という障壁もあり、外国人のコミュニティーも少ないことから、申請者も少なく、また難民認定率も数年前まではごく低かった。そのため、メディアは「難民鎖国」などと非難していました。しかし、昨今の日本の状況が大きく変化していることはほとんど報じられていません。
国軍によるクーデターが起きたミャンマーについて、在留するミャンマー人3万5000人の希望者に「特定活動」の在留資格を与え、タリバンによる権力掌握後にはアフガン人400人を日本に避難させ、350人以上を難民認定した。またウクライナからの避難民も2500人を受け入れ、内戦に苦しむスーダンについては、在留スーダン人200人のビザを延長しました。
昨年の入管法改正により、従来の難民制度に加えて、補完的保護対象者(準難民)制度が創設されました。ウクライナ避難民の大半は補完的保護の対象になるでしょう。
15年ほど前には年間50人前後だった難民受け入れ数が、今年は準難民も合わせれば1500人を超えると見られ、「難民鎖国」は終わったといえます。
他方で、難民申請さえすれば強制送還が回避できるという「送還停止効」に歯止めがかけられました。難民救済の範囲を広げるとともに、難民制度の乱用を防ぐ体制になったわけです。
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