合法化が進むアメリカで「大麻の密輸・密売」が激増しているのはナゼか…元マトリ部長が説く“大麻合法化”の不都合すぎる真実
“合法化せざるを得ない状況にあった”
先ほどのコメントを私なりに補足するなら、日本がアメリカ(一部の州)やカナダ等の大麻政策を真似る必要は全くないということだ。どの国でも大麻という植物の有用性は認めているものの、乱用による安全性を認めているわけではない。では、“合法化”する国にはどんなメリットがあるのだろうか。たとえば、大麻政策を転換する背景には、以下のような事情がある。
・大麻が爆発的に蔓延し、若者どころか子供達にまで大きな影響が出ている(もう蔓延を食い止める手段が見当たらない)。
・薬物犯罪組織に数百億円という大麻の犯罪収益が流れている(カナダでは、犯罪組織が年間60億ドル、日本円で約5000億円もの利益を得ていると推計)。
・大麻はヘロイン等のハードドラッグと比較して有害性が少ない。
・ならば国の管理下に置き、犯罪組織に膨大な資金が流れるのを阻止すべきではないか。
・国が生産と流通を管理することで若者の大麻使用を抑制できる。
・取締機関の運用を効率化するためにも、より重大な犯罪への対応に人員を割くべきだ。
合法化に至った各国、各州には社会的事情や考え方に様々な違いがある。そして、合法化と言っても、大麻の安全性に国がお墨付きを与えたわけではなく、あくまでも“合法化せざるを得ない状況にあった”と捉えるべきだろう。
2021年3月に合法化に踏み切ったニュヨーク(以下、NY)州の場合は、はなから「税収の確保」と、下記のような「人種差別の解消」をその目的として挙げている(なんともコメントしがたいが)。
〈大麻を使用している白人と黒人はほぼ同じ割合、ところが大麻で検挙される黒人の数は白人の3倍に上っている。黒人逮捕者を減少させ、人種差別を解消するために大麻の少量所持を非犯罪化する必要がある〉
こうした社会的・思想的背景を受けての制度改正を、薬物事情が全く異なる日本や韓国といったアジア諸国に、そのまま当てはめるのは少々無理があるだろう。
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