AIの進化で“校閲者”は絶滅するのか 活字文化を支える「校閲」、デジタル化で変わったこと、変えられないこと

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AIと校閲

 校閲業界に今後大きな変化をもたらしそうなのが、AIの進展です。文章校正AIの開発も進んでおり、すでに活用している企業もあるでしょう。校閲者は今後絶滅してしまうのでしょうか。

 単純な誤字脱字についてはAIがそれなりに拾ってくれるものの、日本語特有の曖昧さ、表記の揺らぎについて充分な理解に到達しているかは疑問が残ります。文芸やノンフィクション、学術書などジャンルや著者の属性が変われば、疑問の出し方も異なってきますが、そこまで配慮してはくれません。

 調べものに関しては、AIは実力を発揮します。しかし、ある事実を調べるにあたり、AIが答えを明示してくれても、その事実が本当にその原稿の文脈で参照すべきものなのか、その事実をどういう資料から拾い上げたのか、そもそも本当に正しいのかなどといったことは、人間である校閲者が考え、精査していくことになります。特にノンフィクション作品ではファクトチェック という意味で「調べもの」は肝になりますし、しかも、最近はより厳密なファクトチェックが求められる傾向にあります。

 確かに「こういうことを論じている文献を教えて」などとChatGPTに指示すれば、比較的正確な答えをもたらしてくれます。AIそのものに調べさせるというより、調べものの補佐をしてもらうイメージです。

 今後、飛躍的にAI技術が進展したとしても人間が手掛ける部分は必ず残ります。AIをうまく使う「AIを操る校閲者」というのは残ることになるのではないでしょうか。

※8月29日に行われたオンラインイベント「新潮社の校閲講座〈ライブ配信編〉『ノンフィクション校閲の現在』」(新潮社『本の学校』にて期間限定公開中)の内容をもとに記事として再構成しました。

デイリー新潮編集部

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