81歳現役女医が75歳で筋トレを始めた理由 毎日食べる「野菜スープ」作りのコツも解説

ドクター新潮 ライフ

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激烈な更年期障害との闘い

 健康を維持・促進するためには、一に運動、二に運動。これがいまの私の考えです。しかし、運動をする狙いは筋肉を鍛えることだけではありません。もちろんサルコペニア、そしてフレイル(要介護一歩手前の老衰)対策として筋トレは欠かせませんが、健康にとって何よりも大切なのは、私の専門でもある「循環」、つまりは「血流」です。脳を含めた体全体の血流の改善こそが、動脈硬化対策の意味でも健康を保つ基本です。

 そのためには、体を動かす筋トレが一石二鳥なのです。そして、血流を良くするためのもうひとつの基本が、次に紹介するいにしえからの教えです。

 冷えは万病の元。

 体に不具合が生じるとすぐに薬に頼ってしまう傾向がある現代人は忘れがちですが、改めて先人の教えに思いを巡らせてみるべきだと感じます。これは医師の立場からの啓発であると同時に、「患者だった私」の立場からの、実体験に基づいた身に染みた報告でもあります。

 私の60代を一言で表すと「絶好調」でした。心身ともに満たされていて、これからの人生が楽しみで仕方がないというほど充実していました。それはもしかしたら、その前の10年超にわたる「暗黒時代」があったため、そこから解放された60代がより晴れやかに感じられたのかもしれません。48歳から59歳にかけて、私は激烈な更年期障害との闘いを余儀なくされていたのです。

唯一症状を緩和してくれたのがお風呂

 生理時の過多出血で子宮筋腫の手術を受け、その際に両側の卵巣も摘出しました。そして始まった異常発汗、下半身の激しいしびれ、立っていられないほどの疲労感に倦怠感、全身の冷え……。女性ホルモンであるエストロゲンの低下による深刻な更年期障害でした。

 体の不調は頭脳にも影響を及ぼし、もともと記憶力に自信があって手帳いらずだった私が、予定を間違えるようにもなりました。学会の予定を大幅に勘違いし、なんと本当の開催日の1年前に、開催場所の名古屋まで新幹線に乗って行ってしまったこともあったほどです。

 ホルモン補充療法(HRT)や漢方、気功、鍼灸(しんきゅう)、あらゆる治療法を試みましたが効かず、結局は時の経過が解決してくれるのを待つしかありませんでした。そうした辛い状況の中で、唯一、一時的であったとしても症状を改善してくれたのがお風呂だったのです。

 入浴し、体を温めることによって明らかに調子が良くなる。脳を含めた体全体の血の巡りが良くなることで、症状が楽になるのです。身をもって、血流こそが健康の一丁目一番地であることを実感しました。

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