制作費2000万円を「僕らの音じゃない」でやり直し… 「SLT」佐藤竹善が語るバンドの原点と挑戦

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ソロとSLT

 SLTはバンドだが、ドラムやベースはいない。プロジェクトユニットのような形でありつつ、それでもソロとは異なる。デビュー前からバンドと並行してソロ活動をしたいと考えていた佐藤の意図が反映されてのものだろうか。

「バンドは3人の意見が集約されて作品ができる。ソロは、千章や西村が興味がないような音楽にまで広げて実験的にいろんなことができる。それが自分の肥やしになり、バンドにもフィードバックできるんです。最初の頃、千章や西村はソロ活動には肯定的とは言えなかったけど、今は三人ともソロも精力的にやっていますね」

 デビューから10年が過ぎた頃からは「最終的に音楽で何を目指したいのか」をテーマに活動を続けてきた。

「ぼくらはSLTをやりたくてこの世界に入ったというよりは、やりたい音楽を作るためにSLTを作ったんです。その上で、SLTをやってきたことは誇りです。ファンもそんなSLTに誇りを持ってくれているし、その思いを大事にして、今までの曲も奏でる。そんな思いでいます」

35周年の感動が新たに

 10月30日には、東京ドームシティホールで昨年行われた35周年記念ライブでのSLTを追ったBlu-rayやDVDが発売される。米米CLUBのホーンセクションでもある「BIG HORNS BEE」も参加したSLTのサウンドが再び楽しめる。

「千章は大学の先生になって多忙(※2018年より尚美学園大学の芸術情報学部音楽表現学科准教授を務めている)。西村も、一昨年のライブで公表したように咽頭がんを乗り越えた。その意味ではまず記念ライブができたことに感謝ですよね。BIG HORNS BEEとの一夜限りのマジックや、30周年ライブから5年経ったことでの熟練感が映像から伝わればいいですね」

40周年に向かって

 邦楽・洋楽を問わず、いい音楽が並び立つ中で青春期を過ごした佐藤は、自身が好きな音楽がどういうものかを、いまだに突き詰めて考えている。

「それを追いかけることが、自分にもファンに対しても最も誠実だと思うんです。特に僕はポップスという形で、常に最先端な音楽へのアプローチを実現したいと考えています」

 一方、ファンが何を求めるかを意識することはないと語る。

「SLTにおいては、SLTで何ができるか、を大事にして続けていきたい。40周年での最大の目標は一緒にやれていたらいいなということ。作りたい音楽は3人それぞれにあり、それが合わさって出てくるものがある。でも3人が揃わないと止まってしまう。まずは一緒にやっているのが最大の目標ですね。逆にソロにおいては一新人かというぐらいのトライを続けて音を作り続けていきたい」

 自らの中に蓄積させた音楽を、形にし続けていく姿勢には微塵の変化もない。

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 バンド35周年、ソロ30周年と昨年から節目が続いてきた佐藤。第1回【歌謡曲好きの少年は、ビートルズ、フォークの洗礼を受け…「佐藤竹善」に警察官の夢を捨てさせた“運命の一枚”とは】では、演歌や歌謡曲から始まった自身の音楽歴などについて語っている。

デイリー新潮編集部

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