慢性的な「人手不足」に悩む労働現場…変革のカギは日本企業が避けてきた「2つのキーワード」

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「生産年齢人口」とは

 こうした人口問題を労働や経済という観点からとらえる際に注視すべきなのが「生産年齢人口」だ。生産年齢人口とは、15歳から64歳までの人口のことで、労働や経済における中核的な年齢層のことを指す。

 日本の生産年齢人口は、1995年に8726万人でピークに達したが、その後、先の人口オーナス期に入ると、2020年には7509万人まで減少。さらに2032年には7000万人、2043年には6000万人、2062年には5000万人を割り、2070年には 4535万人まで減少するとされている。

 労働・経済の中核を担う生産年齢人口が少なくなることは、つまるところ労働力が不足することを意味する。1人あたりの業務負担が増え、長時間労働になるだけでなく、国内総生産(GDP)の減少にもつながり、経済成長に悪影響を及ぼすのだ。

 日本は世界GDPランキングでは、1968年に西ドイツを上回って以降、42年もの間アメリカに次ぐ2位を保ち続けていた。それが、2010年に中国に抜かれ3位になると、今年初めにはドイツに抜かれ4位へと転落。

 そう、まさに今日本はこうしたボーナス期による影響を受けている只中にあるのだ。

 さらに労働現場では、高度経済成長期時代の感覚のままの働き方を続けた結果、長時間労働などによる過労死が社会問題化。この是正のために「働き方改革」が施行されるも、労働時間が短くなることで、人手不足に拍車がかかる悪循環に陥っているわけだ。

 これまでの連載でも記してきた通り、各業界が抱える人手不足には、それぞれに原因や背景はあるものの、そもそも物理的に日本の「はたらく人」の数が減ってきているため、現在のような「どの業界でも人手不足」という状態が起きているのである。

 こうしたなかでも企業が生き残るためには、従業員の生産性向上や、労働力を確保する必要があるが、その効率性を高められる能力のある労働者とそうでない労働者に乖離が生まれ、格差が生まれやすい環境にもなりつつある。

女性の社会進出

 そんな人手不足対策として各業界が積極的に採用し始めているのが「女性」だ。

 女性差別撤廃条約や男女雇用機会均等法などの法律が整備され始めると、女性の社会進出が加速。男女共同参画局の資料によると、現在の女性就業率は72.4%と、男性の正規雇用率84.2%にはまだ及ばないものの、その差は年々縮まりつつある。

 一方、女性の年齢階級別労働力率を示すグラフを見てみると、 1981年は綺麗なM字カーブを描いている。

 この曲線は女性の社会進出が進む北欧などでは綺麗な台形をしているのだが、40年前の日本では、学校卒業後、働き始めた女性が25歳~29歳には結婚・出産・子育てのために退職し家庭に入り、子育てが一段落した後に社会復帰することで、M字カーブになっていることが分かる。

 一方、令和4年のグラフは、未婚や晩婚、また結婚後や子育て中でも仕事をやめず働き続ける女性が増え、M字カーブの底が年を追うごとに浅くなり台形に近づきつつあることから、女性の社会進出が少しずつ進んでいることが見て取れる。

 しかし、高度経済成長から続く男性社会は、女性は非常に働きにくい環境だ。

 とりわけ人手不足が顕著であるブルーカラーにおいては、国や自治体、業界が女性の参入を促しているケースでも、専用トイレや更衣室すらないような現場が少なくない。

 そんななか、「ドボジョ」(女性土木作業員)、「トラガール」(女性トラックドライバー)といった呼称をつけるなど、男性目線の誘致しかできない昭和の化石のような感覚で女性を招き入れようしても、うまくいくはずがない。

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