慢性的な「人手不足」に悩む労働現場…変革のカギは日本企業が避けてきた「2つのキーワード」

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 この連載執筆に際し、多くの業界の現状を調べ、現場に取材・聞き取りをしてきているが、どの業界の関係者も口をそろえる言葉がある。「人手不足」だ。人間にとって「はたらく」とはそもそも何なのか。過去から現在において、その行動の意味はどう変化してきたのか。今回は、日本の「はたらく」人を取り巻く環境の変化と労働にまつわる背景について考察したい。

人手不足までの変遷

 戦後日本の目覚ましい発展の歴史は誰もが知るところだろう。

 特に1960年代の高度経済成長期ではオートメーション化による大量生産が進み、1964年に人を運ぶ新幹線、1965年にモノを運ぶ高速道路が開通すると、日本経済は加速度的に発展した。

 家庭には洗濯機、白黒テレビ、冷蔵庫という「三種の神器」と呼ばれる家電も揃い始め、効率性も生活スピードも、人が世の中に求める満足感も上がっていった。

 こうして経済が発展すると人口も増える。戦後の人口ピラミッドは綺麗な「富士山型」だ。2023年現在の日本人の総人口増減率が-0.69%であるのに対し、高度経済成長只中の第二次ベビーブーム期は驚異の1.4%。50人のクラスが1学年に10あっても不思議ではない時代だった。

 このように、国の人口が増える時期を「人口ボーナス期」という。

 人口ボーナス期は、国に豊富な労働力・人材力がある一方、従属人口(14歳までの年少人口と65歳以上の老年人口)が少なく、教育費や社会保障費の負担も少なく済む。そのため国も経済政策に注力でき、経済が活性化しやすくなるのだ。

 そんな人口ボーナス期に変化が起きたのが1990年代。バブルの崩壊である。

 これに伴う経済の衰退のほか、晩婚化などの影響により、日本は人口ボーナス期の終焉を迎え、逆に人口が減少していく「人口オーナス期」に移行した。

 ピークだった2008年には1億2808万人だった人口は徐々に減り始め、現在日本の人口は1億2378万人。

 恐ろしいことに、その国で一度人口オーナス期に入ると、自力では二度と人口を増やすことができないと言われている。高齢者の増加などで社会保障費の支出が急増するためだ。日本はこのままいくと2048年には人口が1億人を切るという試算も出ている。

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