石破政権は「アベノミクス」を否定できるか? 経済学者が指摘する看板政策“地方創生”の思わぬ落とし穴とは

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石破内閣の布陣が示すもの

「石破政権の発足は、安倍晋三元総理から続くアベノミクスの転換点といえると思います」

 と指摘するのは慶応義塾大学経済学部教授の土居丈朗氏である。9日石破茂内閣が発足し、新政権の船出となった。

 石破首相が苦手とされる経済政策について専門家はどう見ているのか。

「岸田政権では安倍派の影響力が強く、結果的にアベノミクスを微修正する形で政策を続けてきました。例えば、拡大した補正予算の規模を縮小することができず、完全にアベノミクスを否定するまでには至らなかった。ただ、いまは物価が上昇し、インフレに転換し、金利も上がりつつあるという経済環境の変化の中で、アベノミクスをそのまま踏襲するかといえば、そうならないのではないかと思っています」

 例えば、財政政策については、

「石破政権では数十兆円規模の補正予算を組むような積極的な財政出動を促すような形にはならないでしょう。それは内閣の布陣を見ても窺えます。岸田内閣では官房副長官や総理秘書官がバラマキ型の政策を推進しているように見受けられました。官房副長官だった木原誠二さんは財務省出身ながら、幹事長代理として定額減税を実施するなどしてきましたから」

 石破政権の面子を眺めると、そこは大きな変化がみられるという。

「加藤勝信財務大臣は安倍政権下で官房副長官としてアベノミクスを推進していた側ですが、旧大蔵省出身でもあり財務大臣という大役を担うなら財政出動については抑制的でしょう。また、石破政権の官房副長官である橘慶一郎さんと青木一彦さんは岸田政権下で財政健全化を議論する自民党の『財政健全化推進本部』のメンバーです。特に橘さんは2015年、当時の稲田朋美政調会長が委員長だった自民党の『財政再建に関する特命委員会』で事務局次長を務め、財政健全化の議論に深くコミットしてきました。そういう布陣を見ると、これまでのように補正予算で20兆円、30兆円を組むような形にはならず、10兆円を下るくらいの規模感になるのではないか、と感じています。その意味では早期解散に打って出たのも、そういう予兆を感じさせます。本来であれば、大型の補正予算を組んで、国民の信を問うても良かった。そうしなかったのはそこまでの規模にするつもりがない、ということではないでしょうか」

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