総裁選でも新政権でも議論されない“日本の急所” ダウンサイジングしなければ破綻する
金利を上げたくない意味
過去最多の9人が立候補した自民党総裁選では、アベノミクスの「第2の矢」とされた財政出動を、積極的に行うべきだと主張する候補が目立った。高市早苗氏を筆頭に、茂木敏充氏や加藤勝信氏にも積極財政志向が見受けられた。小林鷹之氏も財務省出身でありながら、積極財政に傾いていた。
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だが、いまの日本が財政を積極的に出動できる状況にあるのか、と問いたい。日本の債務残高はGDP(国内総生産)の2倍を超え、世界で最悪の状況だとされる。そんな状況に無頓着でいられるのは、これまで金利がないに等しかったからである。
積極財政を主張する人たちも、むろん、低金利を前提にしている。現在、日本は「ゼロ金利」から「金利のある世界」に戻ったといわれるが、それでも日本の金利は、欧米諸国にくらべればないに等しい。積極財政策とは必然的に、こうして金利が低いことを前提に、国債をどんどん発行して債務残高をさらに増やすこととイコールだ、といえる。
金利が上がれば、積み上がった国債の利払いが激増し、あらたに財政を積極出動する余裕がなくなるばかりか、利払いのために財政が大きく制約されてしまう。だから高市氏は、アベノミクスの「第2の矢」を継続して放てる環境を維持するために、日本銀行の金融政策について「金利をいま上げるのはアホやと思う」と発言したのだろう。
しかし、これ以上の借金に日本が耐えられるとは到底思えない。
もともとの主張は、積極財政と対極の財政健全化である石破茂氏も、総理になってからは、その主張を押し出していない。むしろ、利上げが予測されると株価が下がることを懸念してか、「個人的には現在、追加の利上げをするような環境にあるとは思っていません」と述べた。それでいいのだろうか。
日本が利上げせず、欧米の金利差が開いたままだと、円安を修正できない。この10月から値上げされた食品は2900品目におよんだと報じられたが、原因の過半は円安である。現在、個人消費が改善されない主因は、消費者の物価高への懸念なのだから、円安を修正して物価高を抑えてこそ、個人消費の後押しにつながる。そのためには、利上げが必要なはずである。
ただ、ここでは、もう少し巨視的な目で眺めてみたい。はたして日本に、積極財政策をとれるような経済力があるのか。債務残高が増えることに無頓着でいられるのは、日本が「大国」であるという、過去の幻想にとらわれているからではないだろうか。
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