【光る君へ】「清少納言」はこき下ろして「和泉式部」はそこそこ褒める 紫式部の政治的理由

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同僚はそれなりに持ち上げる

 ところで、紫式部は『紫式部日記』で、ほかの女房についても品評している。『光る君へ』で、道長に「いい人がおります」と紹介した和泉式部についても、以下のようなに書いている。

「和泉式部といふ人こそ、おもしろう書き交はしける。されど和泉はけしからぬかたこそあれ、うちとけて文はしり書きたるに、そのかたの才ある人、はかない言葉のにほひも見えはべるめり。歌はいとをかしきこと。ものおぼえ、歌のことわりまことの歌詠みざまにこそはべらざめれ、口にまかせたることどもに、かならずをかしき一ふしの、目にとまる詠み添へはべり」

 さっと訳してみる。

「和泉式部という人とは、趣深く文通しました。でも感心できない面もありますが、気を許して手紙を簡単に書いたりすると、そういう才能はあって、少しの言葉遣いのなかに気品が感じられます。和歌はとても趣があって、古い和歌への知識などは本当の歌人というほどではありませんが、口にまかせて詠んだ歌にも、必ず魅力的な一節を目に留まるように添えます」

 留保が加えられてはいるが、まずまず誉めている。彰子の後宮における同僚なのだから、当然といえば当然だろう。一方、清少納言は、『枕草子』が過去の作品であっても、いまも強い影響力を持っていただけに、必死に否定する必要があったのだろう。

香原斗志(かはら・とし)
音楽評論家・歴史評論家。神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。著書に『カラー版 東京で見つける江戸』『教養としての日本の城』(ともに平凡社新書)。音楽、美術、建築などヨーロッパ文化にも精通し、オペラを中心としたクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』(アルテスパブリッシング)など。

デイリー新潮編集部

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