「あんなにきれいなバッティングされたらもう…」 江夏豊を“完全燃焼”させた伝説の選手「レジ―・ジャクソン」(小林信也)
江夏豊との邂逅
レジーは翌78年のシリーズでも2本塁打を放つなど、2連覇に貢献した。
しかし、ストライキで中断した81年は不調に陥り、FAとなってヤンキースからエンゼルスに移籍した。82年春、朝日新聞のニューヨークからの〈特派員メモ〉に興味深いレポートが載っている。
〈今シーズン、ヤンキー・スタジアムの目下の名物は「レジー」コールだ。
チャンスを迎えるたびに、スタンドは「レエジ、レエジ」の大合唱に包まれる。ワールドシリーズで三打席連続本塁打の離れ業を演じたこともある強打者レジー・ジャクソンの登場を求めているのだ〉
それはワンマンで知られ、レジーの移籍を認めたスタインブレナー・オーナーへの強烈な皮肉でもある。
日本の野球ファンにとっては、忘れられない場面にレジーは登場している。
あの江夏豊投手が85年の開幕前、MLB入りに挑戦した時の話だ。
朝日新聞(2015年4月18日)が記している。
〈最終テストはカリフォルニア・エンゼルス(当時)とのオープン戦。リリーフでマウンドに上がった江夏は五回2死二塁、代打の主砲レジー・ジャクソンと対峙(たいじ)。外角低めのチェンジアップをセンター前にはじき返され、敗戦投手になった。「メジャーで500本もホームラン打ってるバッターが、ものすごい形相で向かってきた。真剣勝負や。それであんなにきれいなバッティングされたらもう、完全燃焼やな」。試合後、ジャクソンは江夏にバットを手渡しながら、ささやいた。「グッドラック」〉
レジーの温かな一面を感じさせる逸話だ。
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