アイドルから演歌歌手へ転身の苦楽…長山洋子「二度と音楽界に戻れないのでは?と葛藤しつつも受け入れた」

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記録と記憶で読み解く 未来へつなぐ平成・昭和ポップス 長山洋子(前後編の前編)

 この連載では、昭和から平成にかけて、たくさんの名曲を生み出したアーティストにインタビューを敢行。令和の今、Spotifyなどの音楽ストリーミングサービス(サブスク)で注目されている人気曲をランキング化し、各曲にまつわるエピソードを深掘りすることで、より幅広いリスナーにアーティストの魅力を伝えていく。

 今回お話を伺ったのは、長山洋子。およそ10年間ポップスを歌うアイドルとして活躍した後、演歌歌手に転身し、「蜩」「捨てられて」「じょんから女節」などのヒット曲をリリース、NHK紅白歌合戦にもこれまで計14回出場している。2024年、デビュー40周年を迎えた長山に、演歌編、ポップス編に分けてサブスク人気曲について語ってもらった。

 彼女の楽曲は、サブスク解禁が’23年6月と、かなり後発ということもあり、Spotifyの月間リスナーは2万人前後と、ヒット実績が大きい割にやや控えめになっているが……

「世の中の流れからは大幅に出遅れましたよね(笑)。それでも聴いていただけているのは嬉しいです。ストリーミングは普段、中学生の娘に教えてもらいながら使っています。ちょっと驚いたのですが、ボーカル入りの曲もオリジナルのカラオケのようにできるんですよね?(Spotify「シンガロング機能」、Apple Music「Apple Music Sing機能」など)それを歌唱の練習に使えるのが便利ですね」

 それでは、今回は演歌部門でのSpotify人気曲を見ていこう。

三味線の立ち弾きが好評の「じょんから女節」、ステージでの披露は「体力勝負です(笑)」

 演歌部門の再生回数第1位は、ダントツで「じょんから女節」(’03年)。演歌への転身からちょうど10年となる節目に発表された楽曲だ。津軽三味線を立ち弾きしながら威勢よく歌う姿は、ステージで独特な存在感を放ち、同作はシングル売上では7番手ながら、「紅白」でも3回歌唱されるなど、今や長山洋子の代名詞にもなっている。

「私も1位は『じょんから女節』だと思っていました。やっぱり生のステージでのお客様の反響がダントツに大きいんですよ! 津軽三味線は、小学校4年生から習っていたのですが、アイドル時代、16歳からの10年間はまったく触ることもなかったんです」

 その三味線を再開したきっかけは、当時の新宿コマ劇場などで行われた座長公演(歌手が大舞台である劇場で開くステージ)だったと言う。

「演歌に転身した時、まずは座長公演が目標でした。それが29才の時に実現したのですが、まだ演歌のオリジナル曲も揃っておらず、先輩方のカバー曲を歌っていたんです。そこで、さらに自分らしい芸も披露できないかと考え、津軽三味線をもう一度お稽古して、なんとかステージで津軽民謡を披露できるようになりました。

 その立ち弾きのスタイルは、最初はみなさんに驚かれましたが、とても好評だったので、“自分の大きな武器になるから”と、続けることになったんです。でも、立ち弾きできる津軽民謡は限られているので、オリジナル曲を作ってもらおうということになり、『じょんから女節』が誕生したんですね」

 本作は1年以上オリコンTOP200に入るロングヒットで累計売上は10万枚を超え、この後も「おんな炭坑節」、「嘘だといって(ニュー・バージョン)」、「博多山笠女節」(Spotify13位)、「じょっぱり よされ」(同12位)そして最新の「白神山地」(同14位)と、立ち弾きスタイルのシングル曲を5作以上リリースしてきた。それにしても、5キロほどの太棹の三味線を弾きながら歌うというのは、相当な集中力や体力が必要ではないだろうか。

「そうなんです! 最新のステージでは『じょんから女節』の7分近くあるスペシャル・バージョンと、新曲の『白神山地』の2曲を立ち弾きしていますが、実は年齢とともにキツくなっています(苦笑)。お客様の顔を見ながらパフォーマンスしている時は、まったく感じないのに、終わってから相当に息が乱れているなと気づきますね。さらに、演歌歌手の方はみなさんそうですが、1日2公演に、昼公演と夜公演の間の会場移動もあって、毎日が体力勝負です(笑)」

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