「かまいたち」は「ダウンタウン」に取って代わり“天下人”になれるのか TBS「お笑いの日」が“試金石”に

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

品の良さと大衆性

 それに比べると、かまいたちはレギュラー本数では負けていないものの、深夜番組も多く、まだ一般的な視聴者層に十分食い込んでいるとは言えない。確実に結果を出しているのは間違いないが、代表作と言えるような大ヒット番組にはまだ出会っていない。鳴り物入りで始まった「ジョンソン」(TBS系)も今年9月で終わってしまった。

 ただ、かまいたちには千鳥にはない強みがある。それは品の良さと大衆性である。彼らは良い意味で落ち着きがあり、品の良いところがあるので、波風立てずにどんな場所にも馴染むことができる。特に、濱家隆一は見た目もこぎれいで女性からの支持もある。

 また、かまいたちの2人は、良くも悪くも芸人としては俗っぽいところがあり、お金のために仕事をしていると公言している。山内健司は「十分なお金を稼いだら仕事を辞めたい」と語っている。2人とも子持ちの既婚者であり、テレビやラジオで子育ての話をすることもある。芸人にしては地に足のついた生活感のある生き方を見せている。

 彼らのYouTubeチャンネルは登録者数230万人を超える人気チャンネルである。その人気の秘密は、大衆向けの手堅い企画を割り切ってできる彼らの「一般人目線」にある。

 ほとんどの芸人には「奇抜なことをやりたい」というプライドのようなものがあって、ほかでもやっているようなことを自分でやるのは嫌だという感覚がある。

 でも、かまいたちの2人には「受け手が求めているものを提供する」という良い意味での割り切りがあり、どこかで見たことがあるような企画も堂々とやることができる。テレビの仕事で多忙を極める中でも、YouTubeを更新し続けて、そちらでも着実にファンを増やしている。

 かまいたちが「お笑いの日」の司会を任されたのは、これでかまいたちが天下人になるというよりは、そうなれるかどうかの試金石という意味合いが強い。ここで結果を出せれば、今後こういう大きな仕事が増えていき、徐々に格が上がっていくことになるだろう。

 かまいたちの品の良さと大衆性という強みは、活躍する舞台が大きくなればなるほど、生かされることになる。今後の活躍に期待しよう。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。