昨季「38年ぶり日本一」今季「リーグ2位」でも阪神・岡田監督“退任”のナゾ…「別になにもないよ」のウラにある事情とは

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「なりたくなくても、なると思う」

 阪神・岡田彰布監督(66)が今シーズン限りでの退任を自ら語ったのは、10月6日の練習前のことだった。クライマックスシリーズの突破、日本シリーズ進出に向けた最終調整を前に選手、コーチ、スタッフも集め、「(在任)2年間の集大成」という言葉を使いながら、“一連の報道”を認めたという。

「岡田監督が円陣を解いた後、空気というか、雰囲気が変わったと、その場に立ち会ったチーム関係者が言っていました」(在阪記者)

 その練習後、粟井一夫球団社長も記者団の要請に応じ、「実績がある監督。お力を借りながら次のシーズンを戦っていきたい」と、指揮官の今後について明らかにした。当の岡田監督はこの日もノーコメントで球場を後にしたが、翌7日になって、

「別に何にもないよ、そんな。もう別にいらんことしてもしゃあないから」

 と、淡々とした口調で記者の問いに答えていた。その落ち着きはらった表情から察すると、12日からのCSファーストステージに向けて、気持ちの整理もできたのだろう。

「シーズン終盤戦、会見に応じないで帰る試合が増えていました。勝敗に関係なく、です。一方で、巨人に優勝マジックナンバーが点灯しても、阪神の戦闘意欲は変わりませんでした。自身の進退のことで選手を動揺させたくないと思ったのでしょう」(前出・同)

 すでに後任としてOBの藤川球児氏(44)の名前が挙げられている。同氏は過去に将来、監督になりたいかと聞かれた際、「なりたくなくても、なると思います」と発言したこともある。リップサービスだったのかどうかは不明だが、阪神の球団本部付スペシャルアドバイザーの肩書きを持ち、2020年の現役引退後も、古巣の春季キャンプに顔を出すだけではなく、長期滞在してファームの若手投手を直接指導してきた。

「第二次岡田政権では、外国人選手の現地情報を集める仕事にも携わってきました。キャンプでの指導歴もあり、藤川監督がこのまま誕生しても、選手たちに違和感が生じることはないでしょう。でも、藤川氏は米国に永住権の申請をしているという話があり、近年中の監督登板は厳しいのではないかとの、情報もあります」(ベテラン記者)

 岡田監督は後継者についても、何も語っていない。CS終了までは試合に専念することに決めているのかもしれないが、今回の監督退任を巡る動きと並行して聞こえてきたのは「またか?」という声だ。

なぜ2年間だったのか

 金本知憲氏の監督退任(2018年)や、スター選手だった鳥谷敬氏の退団(2019年)など、阪神はチーム功労者がタテジマを脱ぐ際、騒動に発展することが多い。優勝を逃がしたとはいえ、甲子園球場に300万人を動員した岡田監督が「なぜ辞めることになったのか」、きちんと説明されていないことを不満に思うのは、関係者だけでなくファンも同じだろう。

「2年前の監督就任会見では『契約任期』が明確にされず、スポーツ新聞1社だけが『2年契約』と報じました。契約が満了となっても、23年、24年の成績と人気を考えれば、続投の話が一度も出なかったのか、疑問です」(前出・同)

 9月27日に東京都内で開かれたオーナー会議でのことだ。終了後、阪神・杉山健博オーナーが記者団に帰路を塞がれ、岡田監督の進退を質問された。

「今日、皆さま方にお話しすること、あるいは、お話しできることは何もございません」

 杉山オーナーはそう答えたが、プロ野球報道の現場において「否定も肯定もしない」のは、「辞める」の暗示とも解釈される。とくに阪神はその傾向が強く、久万俊二郎オーナーのいた2000年代は、監督人事について聞かれると、否定・肯定どちらにも取られないように、「白紙です」の言葉が使われていたそうだ。

 杉山オーナーの対応を受けて、岡田監督の退任を“確信”したメディアも少なくなかったそうだが、こんな声も聞かれた。

「スポーツメディアによる退任の一報が出たのは10月3日で、阪神の今季最終戦となるナイトゲームが始まる前でした。ペナントレース最終戦に合わせたのかもしれませんが、この後、阪神はクライマックスシリーズを戦います。日本シリーズに進出する可能性も残されており、チームに与える影響は計り知れません。クライマックスで対戦するチームの意向も絡んでいるのではないかと勘繰る向きもあります」(NPB関係者)

 思い出されるのが、岡田監督誕生の経緯だ。22年のシーズン終盤、阪神球団は矢野燿大監督(当時)の後任候補の絞り込みを終えていたが、阪急阪神ホールディングスの角和夫代表取締役会長兼グループCEOがそれを却下し、岡田監督の再登板を強く推してきた。

「角CEOを始めとする旧阪急グループ出身者は、タイガースのことには口を挟まないとする暗黙のルールもできていました。でも、長く優勝から遠ざかっており、タイガースが勝つことによる関西への影響力の大きさも考えて、岡田監督の再登板だけは角CEO主導で進められました」(前出・在阪記者)

 さらに、角CEOは事あるたびに「タイガースへの関与は異例」と語っていたが、その後、「タイガースのことでイニシアチブを握るのは2年間だけ」と、関係者に改めて伝える席上に第三者も立ち合わせていたという。つまり、「2年だけ」の約束は絶対に守り、その証人もつけたのである。今のタイガースには岡田監督を退任させる理由は見当たらない。ということは、監督自身もこの流れに身を任せただけなのかもしれない。

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