欧州「極右」の勝利は“民主主義の危機”ではない…「リベラル政治家」は中間層の怒りと向き合うべき
オーストリアでも極右が勝利
欧州で極右政党の台頭に対する警戒感が日に日に高まっている。
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9月29日に実施されたオーストリアの国民議会(下院)選挙で、極右政党の自由党が約29%の得票で戦後初めて第1党となった。1956年に元ナチス党員などが中心となって設立された自由党は、欧州連合(EU)に懐疑的である一方、親ロシアを掲げる。選挙戦では激増する移民を問題視して国民の不安を煽ったと言われている。
オーストリアは今や移民大国だ。本人または片方の親が「外国生まれ」は人口の約3割を占める。近年、シリアやアフガニスタンから大量の難民が流れ込み、政府の移民政策に対する国民の不満が爆発寸前の状態となっていた。
このような状況下で、国境管理の強化や強制送還で移民を規制する「要塞オーストリア」計画を唱えた自由党が受け皿となった形だ。だが、自由党は過半数の議席を確保できなかったことから、政権樹立のためには他党との連立が必要となっている。
自由党に次いで多くの得票を集めた保守党(約26%)のネハンマー党首(現・首相)は「選挙に勝った政党が連立交渉をリードするのは良い伝統だ」と語り、一定の条件下で自由党と連立する可能性を示唆している。
欧州で極右が台頭する根本原因
オーストリアでは自由党主導の政権誕生への反発も起きている。首都ウィーンで10月3日、自由党が主導する連立政権に他の政党が参加しないよう求めるデモが行われた。
ベレン大統領も自由党に対し批判的だ。オーストリアの大統領の政治的権限は強いことから、政権協議が難航することが予想されている。
極右勢力の台頭で政治が機能不全に陥りつつある欧州だが、根本の原因は何だろうか。
オランダ、フランス、ドイツなどと同じくオーストリアでも「表面化する移民問題に後押しされた」と見られているが、今回の選挙で自由党は、移民がほとんど居住していない農村部で特に票を伸ばしている。
オーストリアの専門家はこの現象について「自由党のメッセージの中核は移民ではなく、『エリートは有権者に共感していない』ということだ」と分析している。
高学歴のエリート層が牛耳る欧州連合(EU)は新自由主義的な政策を進める。対して地方で生活する労働者たちの間では、自分たちの政治的な意思が反映されていないという認識が広がっている。極右政党は彼らの被害者意識に寄り添ったことで勢力を拡大することができたというわけだ。(10月3日付クーリエ・ジャポン)
この分析が正しいとすれば、既存政党が移民政策を厳格化しても、極右政党から票を奪い返すことは困難だと言わざるを得ない。欧州でも米国と同様、政治の構図は左派と右派ではなく、上と下の対立に転じた感がある。
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