池田小事件「宅間守の遺体」と一夜を過ごした妻
「心が動きました」と宅間
アムネスティ大阪の岸本修氏が語る。
「彼女は数年前からアムネスティ大阪の入門セミナーに参加していました。“死刑囚との交流があれば教えてほしい”と相談され、何人か紹介しました。宅間さんとは“一緒のお墓に入りたい”と言っていましたね」
そうした中で宅間との結婚に行き着いた由紀子さん。彼女と宅間の交流の一端を垣間見る資料がある。宅間が結婚して以降、戸谷氏宛てに送ってきた十数通の手紙である。その中で由紀子さんのことについても触れていた。その内容の一部をここで初めて紹介しよう。
〈由紀子さんの件は、いろいろと心が動きました。医者のパーティーに群がる女、過去の結婚した女、いろんな女を見ているだけに、打算で動かない女性しかも美人がいたという事がわかっただけでも、何か心が動かざるをえません。由紀子さんは、どうすればよろこぶのか、私にはわかりません。法廷での毒舌も無反省も全部彼女は知っています。しかし自己中心的のまま死んで行くのも望んでいないと思います〉(1月9日着の手紙からの抜粋)
自分が死傷させた子供たちや遺族に対する謝罪の気持ちは持ち合わせていないが、打算のない美人の出現には人並みに感動しているようだ。
〈由紀子さんは、もう2回も来てくれました。(中略)何かマスコミが大変らしく、白浜の実家まで押しよせているそうです〉(1月20日)
〈この前、昨年の10月に裁判所からの押収ノートの廃棄、返却を問う書類に廃棄したのですが、由紀子さんが欲しがった為、つい先日、裁判所に手紙を書いたところ、ノートを返してくれました。今日以降いつでも由紀子さんに宅下げ(※拘置所から外に私物を出すこと)出来るようになっています〉(2月18日)
〈男と女は、ギブ・アンド・テイクでないと、いけません。テイク・アンド・テイクで、いつも引っ張っては、いけません。執行後、ダビにされる前に、シャバに出してくれると約束してくれました。それだけで、十分です。無論、死んでは無となりますから、そんなもんは、どうだっていいのですが〉(6月18日)
これが冤罪事件の映画なら愛と感動の物語なのだろうが、主人公があの宅間だけに身勝手さばかりが際立つ。彼の最後の望みがかなえられたと知った時、遺族はどんな気持ちになるだろう。
[3/4ページ]