くら寿司の「ゴールデンクランチ巻」とGUの「樽パンツ」から学べること
どんな体型の人でも着こなせる仕様
このグローバル本部で商品開発されたのが、バレルレッグパンツだ。これは、バレル(樽)のような曲線が特徴で、アメリカのトレンドを取り入れ、世界のどんな体型の人でも着こなせる仕様になっている人気商品だという。アジアやアメリカだけではなく、全世界でのヒットを目指す商品となっており、販売数も順調に推移しているようである。
今回のGUのニューヨーク進出は、こうした商品開発以外に、人材のグローバル化にも寄与している。商品開発やマーケティング、売り場に関わることまで、世界で活躍できる人材育成を目的としており、多様化した考えの中、世界で唯一無二の商品を提供できるブランドへの成長を目指しているそうだ。
気になった勘違い
ところで、GUなどのファストファッションの開発モデルは、Appleが iPhoneなどで展開するのと同じ“ファブレスモデル”だ。
ファブレスモデルとは、本部は商品の設計や開発に専念し、製造は労働コストの安い中国や東南アジアを中心とする国に委託するというもの。初期投資を抑え、市場の変化に柔軟に対応して品質の良い商品を適宜開発し、その後広告を打ち出してブランディングして売るスタイルだ。
製造分野が国外に流出してしまうものの、こうした知的な労働をベースに世界で利益を生むモデルは、人口減少で人手不足が予想される日本が今後目指すべき方向かもしれない。
ただ、GUの店舗を訪れていた現地の人びとにヒアリングしてみると、こうした製造事情を勘違いしている人も一定数いた。彼らは「GUやユニクロは日本国内で製造しているから安心・安全で品質がいい」と思っているのだ。これらの製造拠点の中心は中国やベトナム、バングラデシュなのだが、「日本製品は質がいい」という過去のレガシーが、GUやユニクロ人気の一因となっているようだ。
この過去のレガシーも日本企業の海外ビジネスを支えるひとつだが、各国の製造レベルはほとんど同水準になってきている現在、その恩恵は長くは続かないだろう。
アメリカは外せない
今回は訪問していないが、エンターテイメント複合施設を展開する「ラウンドワン」も北米に52店舗を出店している(10月5日時点)。この中で、売上の74%を占めているのがクレーンゲームを中心とするゲームビジネスだ。アメリカでは絶好調のようで、ラウンドワンは今後200店舗まで増やす予定だという。
このところ、日本企業の海外進出は、経済成長が著しい東南アジア諸国が中心となってきた。しかし、来る人口減少時代の外資獲得手段としては、世界の個人消費の30%前後を占めるアメリカをターゲットとして外せないのではないだろうか。
アメリカは、戦略的パートナーシップを結ぶ友好国ということもあり、今後はますますアメリカ市場を見据えたビジネスが大事になっていきそうだ。