パリ五輪でメダルラッシュ「フェンシング」は日本のお家芸になれるか 東京五輪金メダリストが語る「競技人口6000人」でも世界を目指すには

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競技普及に期待 スマートフェンシング

 フェンシング界のさまざまな課題を指摘する宇山氏だが、今秋には広島県広島市と宮城県気仙沼市に新たな練習場が開設されるなど、競技を取り巻く状況は徐々に変化しつつある。

 そのような状況で宇山氏が普及を進めているのが、大日本印刷株式会社(以下、DNP)が開発し、自身が理事を務めるスマートフェンシングだ。専用の剣と通電性のあるジャケット、そしてスマートフォン用のアプリを使ってフェンシングを疑似体験できるサービスで、宇山氏も「まずはフェンシングに触れてもらう機会を増やし、本格的に競技を始めるきっかけになれば……」と期待を寄せている。

「今のフェンシングは、レスリングのように“日本のお家芸”に足を踏み入れつつある状況だと感じています。徐々に競技の認知も広まっているような印象を受けますが、『フェンシングをやったことがある』という人は残念ながら多くありません。生活の中で気軽に楽しめるスポーツにしていくことが、競技のさらなる発展に大切なことだと思っています」

 五輪のメダルラッシュを追い風にフェンシング場での常設も決まるなど、スマートフェンシングへの関心もこれまでにない高まりを見せているという。

「フェンシングは室内の省スペースでもできるので、装具の問題さえクリアできれば気軽に楽しめる競技です。ハードルになる要素を丁寧に取り除くことで、多くの人に楽しんでいただけるスポーツに成長を遂げる可能性を秘めていると思います。スマートフェンシングの拡大と、そこから本格的に競技を始める流れを整えていけたら」と意気込む宇山氏は、今後は端末を使った練習会や大会の実施にも力を注いでいく予定とのこと。

「五輪後に高まったフェンシングに対する熱を、なんとか未来に繋げられたら」と今後の展望に期待を寄せた。2008年の北京五輪で太田雄貴さんの活躍を見た世代が、パリ五輪で多くのメダルをもたらしたという。さまざまなドラマと16人のメダリストを生んだパリ五輪は、競技の未来にどのような軌跡を残すのだろうか。その長い道のりはすでに始まっている。

ライター・白鳥純一

デイリー新潮編集部

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