18歳年下の彼女とは「疑似父娘」のはずだった… たった1度の暴走が狂わせた62歳夫の家庭

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「自分の子は4人」

 妻は「どうしてこの年になって、そんな裏切り話を聞かなければいけないの。わざわざ認知なんかする必要ないでしょ。財産とられるってことでしょ」と嘆きました。息子にそんな意図はない。だいたい財産なんてないに等しいじゃないかと言うと、「わけのわからない女とそんな関係になって子どもまで作って。私たちは裏切られた」と身も世もなく泣き続けた。

「こういうときこそ冷静に対処してほしかったけど、妻の言い分ももっともですから、僕に反論の余地はない」

 たったひとりになった息子の行く末も気になった。彼は春から働きながら大学の二部に通うのだと言っていた。しっかりした子なんだ、と栄介さんは妻に伝えた。

「しばらくひとりで考えたいと、妻は実家に帰ってしまいました。実家には高齢の母親が、妻の姉一家と住んでいるんです。とはいえ、いつまでもいられるわけじゃない。1週間ほどで帰ってきましたが、それ以来、ほとんど口を利いてくれません」

 妻は子どもたちにも相談したようだが、それぞれ忙しいので、思うように話し合えてはいないらしい。

「どうしても離婚したいならそう言ってほしいと伝えていますが、妻も結論を出せないみたいで。全部、僕が悪いんですけどね」

 つい先日、息子に連絡をとって紗良さんのお墓を聞いた。だが紗良さん自身の遺言で、遺骨は埋葬されていないという。息子の部屋に骨壺が置いてあるのだ、と。

「息子が住んでいるアパートに行ってきました。机の上に骨壺が置かれて、花が一輪手向けてあった。墓になんか入りたくないと紗良は言っていたそうです。いつかマンション型の納骨堂でも買おうかなと息子は言っていました。僕が買おうかと言ったら、息子は『いや、おとうさんには迷惑かけたくないから』と笑っていた。おとうさんなんて言っていいのかなとつぶやきながら……。誰が何と言おうとオレの子だ、助けになるよと言ったけど、彼は必要以上に接触してきません。紗良の子らしいなと思います」

 今後、家庭がどうなるかはわからない。だが、自分の子は4人だと栄介さんは言う。次男となった彼に、つらい思いはさせたくない。それが紗良さんへの供養になるはずだと彼は信じている。

 ***

 思えば、妻とのちょっとした「すきま風」が、そもそもの原因だったのかもしれない――。順調だった栄介さんの家庭生活がほころび始めた経緯は【前編】で紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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