18歳年下の彼女とは「疑似父娘」のはずだった… たった1度の暴走が狂わせた62歳夫の家庭

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突然、会社を訪問して来た青年

 栄介さんの勤務先は定年が65歳なので、彼は今も現役のサラリーマンである。今年の春、栄介さんのもとへ、ひとりの若者が訪ねてきた。

「受付から呼び出されて行ってみると、すらっとした10代の青年がいたんです。すぐにわかりました。紗良の子だと。苦い思いがこみ上げてきました」

 近くの喫茶店へ行くと、彼は礼儀正しく名乗り、紗良さんの子だと言った。あなたがおとうさんなんでしょうか。DNA鑑定をしてもらえませんか、と彼は申し訳なさそうに頼んできた。

「紗良はどうしてますかと言ったら、『死にました』と。死ぬ前に『あなたには出自を知る権利がある。この人にDNA鑑定を頼みなさい』と僕の名前と会社名を告げたそうです。彼は18歳になっていました。紗良は、本当に僕と1回だけ関係を結んで自ら去っていった。妊娠に気づいても連絡してこなかった。そしてひとりで育てたんです。『母ひとり子ひとりで大変だったでしょう』と聞いたら、『母はいつも明るかったし、最後は雇われでしたが、バーのママもやっていたんですよ。人気者でした』と。ああ、紗良ならいいママになったんだろうなと思いました」

 紗良さんは、自分が妊娠したことを栄介さんは知らない。知らせるつもりもなかった、勝手な生き方をしてごめんと息子に謝罪したそうだ。

「知らないままでもいいんだけど、母がいなくなった今、やはりおとうさんがどういう人かだけでも知りたくてと彼が言うんです。どうしようもない後悔に襲われて、DNA鑑定をしようと僕から言いました」

 結果は親子関係があるとわかった。栄介さんは、自ら「認知」した。潔かった紗良さんのためにも、ここは自分が逃げてはいけないと感じたのだ。

「こうなったら妻にも話すしかない。今、うちは夫婦ふたりきりなんです。長女は結婚して遠方におり、いたずら好きだった次女は日本を飛び出していった。末っ子長男もひとり暮らしをしています。妻にはすべて正直に話しました。認知するからということも」

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