18歳年下の彼女とは「疑似父娘」のはずだった… たった1度の暴走が狂わせた62歳夫の家庭

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あっけなく歯止めを失い

 彼の中の“男”はあっけなく歯止めを失い、暴走を始めた。明け方まで、紗良さんは何度も彼を求め、彼も必死で応じたという。

「始発で帰宅して、こっそりシャワーを浴びてリビングへ行くと、妻はもう起きて朝食の準備をしていました。『飲み過ぎ?』と言われて『カラオケボックスで、同僚に置き去りにされて寝てた』と言ったら『ふうん』って。背中を向けたままだったから妻の表情はわかりませんでしたが、声は柔らかくはなかったですね」

 出勤には早かったが着替えて家を出た。駅近くのコーヒーショップでモーニングセットを食べて、久しぶりに徹夜明けで仕事をした。

「もう、よれよれになってその日は定時で上がりました。年だなあと思いながら、それでも紗良の体の感触がリアルに感じられて、体は疲れているのに心は飛び跳ねるくらいうれしかった」

 帰宅途中で紗良さんにメッセージを送ろうとしたが送れなかった。どうしたんだろうと他のSNSから連絡をとろうとしてもとれない。携帯に電話をしてもつながらなかった。

「翌日になっても連絡がとれない。SNSはどうやらブロックされている。何があったのかわかりませんでした。帰りに紗良の部屋に寄ってみたんですが、電気もついてないし応答もない。その次の日、昼休みにまた行ってみたんです。管理人室があったから、昼間なら誰かいるんじゃないかと思って」

1年後に送られてきた写真

 管理人はいた。紗良さんのことを尋ねると、昨日、急に引っ越していったという。購入したマンションのはずなのにと言うと、ここは全部賃貸ですよと言われた。

「紗良が嘘をついていたのがショックでした。その晩、アルバイトしていた店に行くと、マスターが『紗良ちゃん、急に辞めちゃったんだよ』と声をかけてきた。他の常連たちもどうしたんだろうといぶかしがっていました。誰より僕が混乱していた」

 それきり紗良さんの行方はわからなかった。心配だったし、未練もあった。だが、一方では家庭ある身の上を考えれば、これでよかったのかもしれないとも思った。そうやって納得するしかなかったのだ。

1年たったころ、紗良さんから1枚の写真がメッセージとともに送られてきた。

「栄介さんに似てるでしょって。赤ちゃんを抱っこしている写真でした」

 昼休みにそれを見て、栄介さんは比喩ではなく、本当にひっくり返りそうになったという。確かにあのとき紗良さんは避妊を拒否した。私はピルを飲んでいるから、と。栄介さんは真に受けた。紗良さんが嘘をつくはずはないと思ったから。

「どう返事をしたらいいかわからなかった。オレの子なのかと聞くわけにもいかないし、認知するよとも言えない。どうしたらいいんだろうと思いながら月日が過ぎていきました。正直なところ、だんだん記憶も薄れつつあった」

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