18歳年下の彼女とは「疑似父娘」のはずだった… たった1度の暴走が狂わせた62歳夫の家庭

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【前後編の後編/前編を読む】62歳夫が“還暦を過ぎて子供を認知”するまで 夫婦のすれちがいは次女の「しつけ」をめぐって始まった

 波野栄介さん(62歳・仮名=以下同)は、今年の春、過去に関係のあった女性との間にできた子を認知したという。結婚は、28歳の時に“姉さん女房”の由佳里さんと。経験が豊富な彼女に魅了され、交際半年で「結婚しよう」と告げたという。3人の子に恵まれたが、しつけをめぐり「教科書通り」を押し付けしようとする妻とは時折ぶつかった。そして40代になると、妻の愚痴をさけるために仕事帰りには飲み歩くようになった。そこで出会ったのが、アルバイトとして働く25歳の沙良さんだった。栄介さんが43歳の時である。

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 バーで働く紗良さんへの気持ちは、日に日に敬意から恋愛感情へと発展していった。だがもちろん、紗良さんに気持ちを伝えるわけにはいかない。

「彼女がそんな年上の僕に惹かれるはずもないし、しかもこちらには家庭がある。まったく対象外なのだから、妙な自意識をもつなと自分に言い聞かせていました」

 それでもどこでどうなるかわからないのが男女の仲。ある日、ひどくつらそうな紗良さんに声をかけると「ちょっと疲れがたまって風邪気味なのかも」とかすれた声が返ってきた。

 気をつけてと言い残して帰ろうとすると、マスターが「波野さん」と声をかけた。帰る方向が同じだから、彼女のアパートまで送ってくれないかとタクシー代を渡してきたのだ。

「いや、誰か女の人はいないのと見回したんですが、いなくて。『波野さんならヘンなこともしないだろうしさ』とマスターはつぶやいた。周りの常連も、そうだよとばかりに頷いている。信頼されているのがうれしかったが、男として安全パイだとみられているのが少し癪でもあった。

「熱があるようなので、とにかく早く帰して寝かせたほうがいいと承諾しました。タクシーで部屋まで送ると、彼女は中に入ってほしいと言うんです。解熱剤とか風邪薬はないのと聞くと、ふだん元気だから用意していないと。じゃあ、買ってくるよと近くのドラッグストアで、解熱剤、風邪薬、熱を冷ますシート、経口補水液、ついでにレトルトのおかゆなどを買って戻りました。脱水症状にならないよう水分をとらせて解熱剤を飲ませて。子どもが小さい頃、こんなふうに看病したこともあったなと思い出しましたね。帰るからねと言って鍵を閉め、その鍵を部屋の新聞受けに入れて帰りました」

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