あと一歩で総理になれた「高市早苗氏」はなぜ負けたのか 総裁選の結果を報じた「朝日・読売・毎日・産経・東京」の5紙を読みくらべ…最も詳細に報じたのは意外な新聞

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産経新聞の不思議な紙面

「読売新聞の記事でも麻生さんの動きが詳報されています。とりわけ、総裁選前日の9月26日に岸田さんと麻生さんが電話で話した内容を詳細に伝えた部分には迫力がありました。麻生さんが岸田さんに対し、高市氏支持への協力を要請し、それを岸田さんが断った理由や背景がしっかりと伝えられており、興味深い内容ではあります。とはいえ、毎日も読売も記事の関心は“キングメーカー”の動きに向けられており、それに取材力を投下して記事を作ったことが分かります」(同・記者)

 それでは保守色の強い産経新聞の紙面はどうだっただろうか。こちらは2つの記事が目を惹く。

 1本目は「石破氏、首相支持追い風 高市氏、岸田路線否定で失速」で、2本目は「響いた誤算 高市氏、保守票獲得も惜敗」だ。共に高市氏の名前が主語として機能している。

「1本目は高市さんの人気が急上昇し、岸田さんが強い懸念を示したという内容でした。《防衛力強化のための増税などに反対する高市氏の言動は岸田路線の否定と映った》ことから岸田さんは石破さんの支持を決めたそうです。2本目はリーフレットの郵送問題が尾を引いた可能性があるとした上で、高市さんの善戦を讃えるというものでした。ただ劇的な敗者である高市さんの選挙戦に肉薄したような描写は皆無でした」(同・記者)

敗北を詳報した意外な新聞社

 そして、意外や意外、「高市早苗、かく敗れり」をしっかりとした取材で記事にしたのは朝日新聞だった。「高市氏、ネットとリアルのどぶ板 保守層基盤、党員票積み上げ 自民総裁選」という見出しで報じた。

「記事は冒頭で《善戦の理由は何だったのか》、《初の女性首相誕生まで、あと少しだった》と書き、高市さんの敗因を真正面から報じる姿勢を明確にしました。この記事で興味深かったのは、高市さんの選挙戦は、ネットをはじめとする“空中戦”で保守的な主張が支持を集めただけでなく、実は地道な地方遊説を積み重ねて党員票を掘り起こしていたことを明らかにしたところです」(同・記者)

 記事を実際に見てみよう。まず“空中戦”について触れた部分でも興味深い事実を明らかにしている。なぜネットで高市氏が人気を得たのか、その理由を朝日は次のように伝えた。

《陣営関係者は、7月の東京都知事選で165万票以上を獲得し、2位に食い込んだ石丸伸二・前広島県安芸高田市長を支援した民間スタッフ約50人が、SNS上での拡散に寄与したと明かす》

 実際、高市氏はネット戦略で他候補を大きくリードしていた。しかし、それだけではない。リアルな《どぶ板選挙》にも力を注いでいたという。

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