都会人はなぜいつも「アポ」に追われているのか 「アジがたくさん釣れたけん、今から家行ってよか?」で済む地方の気楽さ

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本当は暇なんだろ?

 さらに、「アジがたくさん釣れたけん、今から家行ってよか?」なんてこともあるし、「今から飲める?」はほぼ毎日だ。本稿を書いている今日だって「鮭とタマネギとジャガイモをもらったけど、今、家にいる?」なんて電話が来て「ほしいほしい!」と私は回答。その5分後、彼女に会い、無事鮭とタマネギとジャガイモをもらい、私はお礼に生のキクラゲを彼女に渡した。これでいいのである。

 一方、東京時代。アポについてはかなり厳格だった。単なる飲み会であっても、誘うと「1週間前に言ってもらわなくては困ります!」なんて言われるし、「1ヶ月先まで埋まっているので、2ヶ月前までに飲み会の案内はください!」とキレられることもあった。

 どんだけお前ら忙しぶってるんだよ……。

 さらに、「アポをいただくのであれば、せめて2週間前に候補を3つあげていただきたかったのですが……」なんてことも言われた。はいはい、申し訳ありません。売れっ子のあなた様をお誘いするのはそれだけ慎重にならなくてはいけないのですね。でもお前、ツイッター(X)の更新しまくってるだろうよ。本当は暇なんだろ?

アポの作法

 なんてことを言えるわけもなく、ひたすら「忙しぶる人」にペコペコするのが都会の作法なのである。別にアポなんてものは「行けます」「行けません」を言うだけでいいのに、なぜいちいち「2週間前に候補を3つ挙げてください」になるのか。

「あぁ、その日は無理ですね」だけでいいのに、いちいちアポ大好きな人々は忙しぶって「アポの作法」をこちらに説いてくるのだ。まぁ、老後、暇になるでしょうから、その時もきっちりとアポを取ってください。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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