2パターンあった「ウイスキーが、お好きでしょ」 名CMソングに杉真理が込めた思い

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きちんと作ったからこそ

「ウイスキーが、お好きでしょ」――。今見ても秀逸なコピーに合わせる曲は、どう挑んだのか。

「最初にコピーがあって、それに合わせたメロディを2パターンぐらい作った。それを石川さゆりさんが(SAYURI名義)歌うために、メロディを膨らませていきました」

 音楽プロデューサーは、化粧品やカメラ、即席ラーメンなど数々の名CMを手掛けた大森昭男氏が務めた。CMからこの曲がヒットした背景には、大森氏の存在が大きかったという。

「こう言ってはアレですが、CM曲を作ると、音楽をよく分からない人がいろんなことを勝手に言うんです(苦笑)。『ウイスキー…』も『何か暗いんじゃない?』と言っていた人がいたと後で聞きました。でも大森さんは『私が責任を持つから』と通してくれて、弦などが入った曲を最後に聞かせたらみんな納得したそうです。とても気概のある人でした」

 ただ「当時はそれほどウイスキーが飲まれる時代ではなかった」ため、CMもほどなく終了。ところが2007年の「角ハイボール」ブームで再び脚光を浴び、ゴスペラーズ、竹内まりや、ハナレグミ、田島貴男、浜崎貴司、藤巻亮太、折坂悠太ら数多くのアーティストがこの曲をCMで歌ってきた。自身のアルバムなどでカバーするアーティストも多く、幅広い層に親しまれている。

「最初はウイスキーとともに曲も埋もれていくのかな、と思っていたほどですが、今では自己紹介代わりの曲ですね。やっぱりちゃんと作っておいて良かったですよ。大森さんはもう一つのパターンの方も良かったと言ってくれました、しかし僕は全く覚えてないんですよ、天国の大森さんのみぞ知る、です」

時代ほど無責任なものはない

 数々の曲を書く中で大切にしてきたのは、リスナーとしての自身の感性だ。もともと譜面も苦手で、難しい音楽理論も分からないというが、指針にしているのはティーンエイジャーの頃の自分だという。

「ティーンエイジャーの僕がどう思うのか。よく時代の波や流れって言うけれど、時代ほど無責任なものはないんです。時代に合わせて作って後悔したこともある。時代は適当に受け流す。時代に合わせると二番煎じになる。エッセンスを取り入れこそすれ、時代を主語にするのはバカバカしいと気付けたのは、ナイアガラ時代です。きちんと根を張って自分の立ち位置をしっかり見つめて音楽にきちんと向き合って作ればいいと気付きました」

「ウイスキー…」など長く愛される曲があるからこそ、説得力が増す発言だ。

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