「罰則がなくて実効性があるのか」…小池都知事肝いりで全国初「カスハラ防止条例」成立でも囁かれる「仕事やってる感」

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「仕事をやっている感」

 ただ、東京都では既に、男女平等参画の促進をうたう「男女平等参画基本条例」があり、都庁内には「内容が被るのではないか」との指摘が出ている。むしろ、女性活躍の条例が必要ということは、現状の男女平等参画の取り組みが不十分であることの裏返しととられかねない。

 実は、かつて東京都では石原慎太郎都知事時代の2011年、都議会が「議員提案」で定めた条例の実効性に疑問符が付いたことがあった。東日本大震災を受けてエネルギーの安定供給を狙った「省エネ推進条例」だ。

 東京都や都民、事業者の責務を明らかにするとともに、省エネを推進するという基本理念などを定める内容。しかし、東京都の環境基本条例や環境確保条例で規定済みの内容が並んでいたことから、他党からは「あえて屋上屋を架す必要はないのではないか」との指摘も出ていたのだ。

 この条例案は結局、内外の反対を押し切って可決されたが、石原都知事は当時、「気が抜けた炭酸みたいな条例をつくってどうなるのか」と不満を漏らした。条例に実効性があったかというと、再エネが十分に広がっているとは言い難い現状がそれを物語っているだろう。

 条例案をつくるというのは公務員にとって、実務的には大変な労力を要する仕事だ。都庁幹部の一人はこの時の対応を念頭に、「条例案をつくると、分かりやすく『仕事をやっている感』が出るので、飛びつくのだろう」とみる。

 もちろん、カスハラ対策も女性活躍も看過できない重大な社会的問題ではある。だからこそ、単なる理念でもなくアピールでもなく、実効性を持たせるための議論が必要なのは言うまでもない。

 しかし、小池都知事が連発するそれらの条例案が実のあるものになるかどうか、極めて疑わしい情勢である。

デイリー新潮編集部

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