「燃やしちゃろうかね」 北九州6人死亡火災、無職男の筋違いな犯行動機 「生活保護のため入居した物件でトラブルが」

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 猛炎に包まれた木造2階建ての屋根から10メートルを超す火柱が上がる。渦巻く熱風。飛び交う怒号。身一つで逃げだす住人――。

 福岡は北九州市、小倉北区にあるアパート「中村荘」が全焼したのは2017年5月7日深夜のこと。入居者16人のうち6人が焼死し、5人がやけどなどの重軽傷を負う大惨事となった。

 火災について市の消防局がまとめた調査報告書では、出火原因は「特定できなかった」とされていたが、

「発生から7年以上を経て、事態は急展開しました。9月26日、中村荘に侵入してなんらかの方法で火をつけた疑いがあるとして、県警が井上浩二という56歳の無職男を逮捕したのです」

 と、地元記者が言う。

「井上は福岡県出身で、中村荘の元住人。火災の約1年前の16年6月から1カ月、生活保護を受給するために入居していました。中村荘の家賃は1日1000円未満で、建物内にスプリンクラーや防犯カメラは設置されていませんでした」

 元住人が放火の容疑者として逮捕されるまでに、どんな経緯があったのか。

執念の捜査

 地元記者が続ける。

「井上が逮捕された場所は、服役していた長崎刑務所です。“別の事件”で福岡高裁から懲役6年の判決を受け、9月26日が満期、翌27日に出所予定でした」

 ここで一旦、時計の針を、17年5月まで巻き戻す。

「火災から8日後の5月15日、福岡県警八幡東署の電気錠が燃やされ、同署管内の交番でパトロール用原付バイクに放火される事件が起きました。県警はこれらの事件で、井上を建造物損壊や非現住建造物等放火などの容疑で逮捕。捜査の過程で井上の衣服や原付バイク、ガスバーナーのような物を押収していました」

 一方で、県警は中村荘の火災が失火か放火かを見極める捜査を継続していた。

「現場付近の防犯カメラに不審な人物が映っていました。防犯カメラ70台超の映像解析によって、この不審人物が、八幡東区のマンションから原付バイクで中村荘付近まで移動して現場を立ち去った直後に出火、その後マンションに戻った様子も確認された。不審人物の着衣とバイクの特徴も八幡東署の事件の押収物と一致したことで、不審人物が井上であり、放火に関与したと断定されました」

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