大ヒット「極悪女王」の脚本料は地上波の「5倍」 テレビドラマに圧倒的な差をつけた「エキストラ」の数と質

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容赦のない演出

 そんな白石監督が女子プロレスの世界に舞台を移して取り組んだ「極悪女王」にも、「凶悪」で見せた容赦のない演出が貫徹されている。その一方で、昭和の時代を生きた少女の夢と、悪役を引き受けざるを得なかったダンプ松本の家庭環境や、女性を利用することばかり考える男たちのだらしなさも浮き彫りにしている。

「女子プロレスの経営陣である松永兄弟を演じた村上淳、斎藤工、黒田大輔はカネ儲けのために試合の進行に口をはさみ、民放テレビ局の中継番組を続けるためにクラッシュギャルズと極悪同盟の対立を煽る計算高い興行師を嫌味たっぷりに演じています。

 そういう姿と対照的なのがクラッシュギャルズや極悪同盟の女子レスラーたち。過激な試合が興行やテレビ中継に影響するという冷酷な事実の中で、自分たちが本来やりたかったプロレスからは遠ざかっていく。ダンプと長与の友情と確執を軸に、昭和の男社会の中で追い込まれていく女子プロレスラーのジレンマを、正面から描くことで見ごたえのある作品に仕上がっていますね」(前出の放送ライター)

「極悪女王」は1980年代に空前の人気を誇った女子プロレスを背景に、友情や競争、社会的な問題を取り上げ、単なるスポーツの枠を超えて、自己実現や逆境を乗り越えるストーリーが描かれているのだ。配信ドラマ関係者がこう振り返る。

「女子プロレスは力強い女性キャラクターを前面に押し出すことで、伝統的な性別の役割に挑戦しています。女性が力を持ち競争的な場で活躍する姿は、女性の視聴者が自分自身と重ね合わせることができる要素が生まれ、女性の連帯感を感じさせるドラマとも言えます。

『地面師たち』が相当男臭い作品だとしたら、『極悪女王』は女性視聴者を引き付け、新たなドラマジャンルを提案する作品になったのではないでしょうか。最終回第5話の最後のナレーションはゆりやんの希望の言葉で締めくくられます。涙なしでは見られませんよ」

 気になるのは製作費。ドラマ界の権威と言われる第76回エミー賞で作品賞など18部門を受賞した真田広之主演のディズニープラス「SHOGUN 将軍」(全10話)は、1話10億円という巨額予算が注ぎ込まれたという。

「『極悪女王』の企画、脚本、プロデュースを担当した鈴木おさむ氏が最近、トークバラエティー番組に出演して脚本料が地上波ドラマの5倍だったことを打ち明けていますし、主要キャラのトレーニング費用や体力向上にも相当な予算が付いたようです。

 一目瞭然なのは試合会場のエキストラの数と質です。日本のドラマの場合、エキストラの演技があり得ないほど下手なことで有名ですが、今回は1人ひとりの表情がくっきりと分かりましたし、その数も圧倒的です。10億円とはいかなくても1話あたり地上派ドラマの4倍から5倍以上の予算が組まれていると推定しますね」(前出の配信ドラマ関係者)

 ダンプと長与の髪切りデスマッチが開催されたのは1985年。当時の試合中継は毎回、空前の視聴率を記録したという。それからおよそ40年。テレビ局の影響力は年々減退し、ドラマは「学芸会」と言われるほどのレベルに。「極悪女王」は日本の地上波テレビの行く末をも暗示しているかのようだ。

デイリー新潮編集部

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