「稽古が圧倒的に足りない…」 最速大関「大の里」に囁かれる不安 親方衆は「このままでは必ず怪我をする」
大相撲に新大関が誕生した。初土俵から所要わずか9場所での昇進は、昭和以降では最速。驚異的なスピード出世を果たした大の里(24)だが、今後については不安の声も聞こえる。再三指摘され続ける「稽古不足」、二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)の「指導力不足」……。真相を探った。
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大の里が将来性豊かな力士であることは間違いない。日体大相撲部時代にアマチュア13冠を達成し、昨年4月、二所ノ関部屋に入門した。一昨年まで大学生だった力士があっという間に大関まで駆け上がってきたわけだ。
昇進伝達式(9月25日)では「大関の地位を汚さぬように、唯一無二の力士を目指し、相撲道に精進します」と口上を述べた。日本相撲協会・八角理事長(元横綱・北勝海)も「安定感があり立派だった」とベタ褒めした。しかし「大関として立場も変わり、求められるものも大きくなってくるが、相撲でも私生活においても“全力士の手本”になってほしい」という異例の注文も付けた。
大の里には“前科”がある。今年4月に部屋で未成年力士への飲酒問題やいじめが明らかになったものの、相撲協会が下した処分は「厳重注意」のみ。2021年、新型コロナウイルス対策のガイドラインを違反し、コロナ禍に「飲酒」した朝乃山が6場所の出場停止処分となった過去があっただけに、「処分が“甘い”と批判が殺到しました」(相撲担当記者)。この時には二所ノ関親方の指導力と監督責任も問われ、「協会は大の里の教育をしっかり行うべき」(横綱審議委員会・山内昌之委員長)という声が上がった。
1時間で息があがる
192センチの恵まれた体格を武器に、右四つを型にして相手をねじ伏せるのが大の里の取り口。スピード相撲が身上なのだが、常に指摘されることがある。稽古不足だ。同門の二所ノ関一門の親方衆でさえ「稽古が圧倒的に足りない。このままでは必ず怪我をする」と忠告する。
元横綱・稀勢の里が開いた二所ノ関部屋は土俵での稽古は週3回が基本である。対照的に猛稽古の代表格は横綱・照ノ富士がいる伊勢ヶ浜部屋だ。「若い力士は1日100番程度、平気で相撲をとる。他の相撲部屋では3、40番を取れば多い方。元横綱・白鵬の宮城野部屋が伊勢ヶ浜部屋に吸収されることが決まった際、宮城野部屋の力士の中には、伊勢ヶ浜の稽古には耐えられないと廃業を選んだ者もいた」(古参の相撲記者)。
二所ノ関親方は中学卒業後に、元横綱・隆の里の鳴戸部屋に入門している。「鳴戸部屋は土俵の鬼として有名だった元横綱・初代若乃花の二子山部屋の流れをくんでいます。稽古の厳しさは相撲界でも屈指でした。稀勢の里はその猛稽古の中で最高位の横綱まで上がりました」(相撲協会関係者)。にもかかわらず、自らの部屋にはその伝統を引き継がなかった。実際、大の里は一門の連合稽古の際などには、1時間ほどで息があがる場面を目撃されている。
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