年収1000万円でも「生活ギリギリ」 “700円マック”人気が象徴する米国「超・二極化」現地レポート

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 コロナ禍からの回復を見せつつも、物価高とインフレが中間層を圧迫……。米国の個人消費は現在「超・二極化」に揺れている。日本にも波及すること必至の米国の現状を、消費経済アナリストの渡辺広明氏がレポートする。

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 9月22日から1週間ほど、取材視察のためにアメリカ・ニューヨークを訪れていた。

 アメリカは、コロナ禍後のサービス消費の急増、人材確保のための賃上げ、それによるさらなる消費拡大と物価の上昇……という循環で、景気は回復傾向にある。だが、インフレによって節約志向も強まっているといい、差し迫る大統領選では、景気への対策も争点になっている。そんなアメリカ経済の現地レポートを今回はご紹介したい。

 滞在中は、取材のためマンハッタン中を地下鉄で移動する日々だったが、ある夜にスキマ時間ができたので、人生初のメジャーリーグ観戦に行ってきた。

 チケットが取れたのは、ヤンキースタジアムで行われたヤンキースの地区優勝がかかる一戦で、1階内野席の最後列だった。値段は179ドル(2万5955円=145円換算)だ。東京ドームの同じような席のおよそ、3~4倍の値段である。しかし、メジャーを生観戦する機会はそうそうないと思い、清水の舞台から飛び降りる気持ちでチケットを買った。

 外野席の最上段でも、チケット代は100ドルする。日本のプロ野球より基本的にチケット料金は高いが、収容人数およそ5万人のヤンキースタジアムは、優勝がかかる大事な試合ということもあり、超満員。アメリカの個人消費の底堅さを見せつけられた。

 その一方で、消費の二極化のコントラストも目立っていた。

期間限定セットが延長、ホームレスの姿も

 マンハッタンのマクドナルドに行くと、6月下旬に始まった5ドル(約700円)の格安セット(ダブルバーガーまたはチキンバーガー、フライドポテト、マックナゲット4個、ドリンクの計4品)を注文している人が多く見られた。このセットは、当初は期間限定だったものの、あまりの反響に12月までの販売延長が発表されている。コロナ禍以降の物価上昇はピークを過ぎたが、このマックの施策からは、家計の苦しい消費者がアメリカ国内に依然として多いことがうかがえよう。

 街中でホームレスを目にすることも多かった。ウォール街のセブン-イレブンの入り口には両側にホームレスが座っていて、少し入りづらかった。ウォール街は言わずと知れた金融街で、連日、NYダウは最高値を更新している。そんな場所にホームレスが点在する光景は、アメリカ国内の経済格差を象徴しているようである。

 アメリカの個人消費は階層ごとに鮮明に分かれている事を実感した視察だった。

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