「ハリス勝利」でも米国は“格下げ”危機なのに…「もしトラ」が引きおこす“デフォルト危機再燃”と“国際経済の悪夢”

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スムート・ホーリー関税法の悪夢再び

 だが、トランプ氏の関税政策は国際経済に悪影響をもたらす可能性が高いと言わざるを得ない。筆者の念頭にあるのは、1930年6月に成立したスムート・ホーリー関税法 だ。

 この法律は1929年10月に始まった株式市場の暴落のせいで苦境に陥った農民を守るために構想されたが、その後、対象は農産物以外の工業製品にも拡大。国内産業全般を保護し、恐慌を克服することが目的となった。

 数多くの輸入品に高関税が課されたことから、米国の輸入関税(平均)は40%にまで上昇した。1931年春に米国の生産と雇用に明るい兆しが見えたことを受けて、フーバー大統領(当時)は「保護主義が正しかった」と胸を張った。

 だが、各国も米国からの輸入品に高関税を課したため、世界貿易が停滞し、米国も含め世界経済全体が悪化するという最悪の結果を招いてしまった。

 当時と貿易品目などが大きく変わっているものの、トランプ氏の政策も1930年代の悪夢を繰り返すのではないかと思えてならない。

ムーディーズも米国を「格下げ」か

 トランプ氏の政策が及ぼす国際金融面への負のインパクトも心配だ。

 米格付け会社ムーディーズは9月24日、どちらの候補が当選しても米国の財政状況は弱体化する可能性が高いと指摘し、米国の信用格付けについて大統領選後の引き下げを示唆した。

 米国政府によれば、米国で国債利払い費が国 内総生産(GDP)に占める比率は来年3.1%に上昇し、第2次世界大戦時のレベルを超える見通しだ。トランプ氏が提唱する所得減税の恒久化が実現すれば、今後10年間の財政赤字はさらに4兆ドル上積みされると試算されている。

 ムーディーズはトランプ氏が8月に「米国の大統領は連邦準備理事会(FRB)の決定に発言権を持つべきだ」との考えを表明したことについて、「金融政策に対する政治的影響は『信用』へのマイナス要因となる」と問題視している。

 3大格付け会社のうち、S&Pグローバルは2011年に、フィッチは昨年8月にそれぞれ米国の格付けを最上級から引き下げている。ムーディーズもこれに続けば、ドルの国際的な信認が毀損することになる。

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