「ハリス勝利」でも米国は“格下げ”危機なのに…「もしトラ」が引きおこす“デフォルト危機再燃”と“国際経済の悪夢”
経済状況の悪化を示す指標が目立つ
11月5日の米大統領選挙まで残り約1カ月となった。ハリス副大統領とトランプ前大統領の支持率は依然として拮抗し、予断を許さない情勢が続いている。勝敗の鍵を握るとされる無党派層の関心は足元の経済状況だろう。
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米国では消費者や製造業の景況感の悪化を示す指標が目立ち始めている。
米民間調査機関コンファレンス・ボードが発表した9月の米消費者信頼感指数は98.7と、3年ぶりの大幅な落ち込みとなった。このところ労働市場が減速し、長期化する生活費高騰と相まって消費者心理を圧迫しているためだ。信頼感指数の水準は新型コロナ禍前を大きく下回ったままだ。
S&Pグローバルが発表した9月の米製造業購買担当者景気指数(PMI)は47となり、1年3カ月ぶりの低水準を記録した。新規受注の悪化などが主な要因だ。
投票1カ月前の10月に入り、選挙戦に大きな影響を与える大きな出来事、いわゆる「オクトーバーサプライズ」の発生可能性にも関心が集まっているが、筆者は米港湾労働者の大規模ストライキがこれに該当するのではないかと考えている。
経済悪化はトランプ氏への追い風だが
米東海岸とメキシコ湾岸の港湾労働者は大幅賃上げなどを求めて10月1日からストに突入した。ストを実施した港の取扱荷物は米輸入品の約5割に達しており、クリスマスシーズンが近づく中、供給網の混乱とインフレの再燃が危ぶまれている。
経済面での悪材料はトランプ氏にとって追い風だ。再選の可能性が高まるだろう。トランプ氏が再選した際の外交・安全保障面での問題点は既に議論されているが、今回のコラムでは「もしトラ」がもたらす国際経済・金融面への影響について述べてみたい。
まずトランプ氏の関税政策(中国からの輸入品に60%の関税、その他全ての輸入品に10%の関税を課す)は百害あって一利なしだ。
「米輸入品の価格が上がりインフレになる」との問題点が指摘されているが、米国民はこの政策に肯定的のようだ。ロイターが9月15日に公表した世論調査によれば、回答者の56%がトランプ氏の関税政策を支持している。多くの国民が「インフレになっても雇用が守られる方が良い」と判断しているのかもしれない。
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