銀行ATMから引き出した新札に「陰謀論めいたメッセージ」が…紙幣への落書きは“犯罪”と思いきや「直ちに違法な行為とは言い切れません」

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紙幣で折り紙や肖像で変顔をするのは?

 今回の紙幣はATMを問題なく通って筆者のもとに届いてしまったわけだが、スタンプを捺す場所によっては、弾かれてしまう可能性もあるのだろう。そして、国立印刷局はこうも記している。

「お札を切り刻んだり、燃やしたりして損傷する行為はもちろんのこと、ちょっとしたいたずら程度と思われる行為も、お札を使う場面では大きな支障となることがあります。お札はみんなで使うものですから、大切に使ってください」

 したがって、紙幣で折り紙をしたり、肖像の部分を折り曲げて“変顔”させたりする行為も“直ちに違法な行為とは言い切れない”、つまりは犯罪には当たらないようだ。

 SNSを検索したところ、新1000円札の北里柴三郎に鼻毛を生やしたり、旧1万円札の福沢諭吉にグラサンをかけさせたり、はたまた自身の性癖を告白した文面を記すなど、“受け取りたくない”紙幣の画像が大量に出てきた。教科書の落書きのようなことを紙幣にする感性は理解できないが、これらも芳しくはない行為だが犯罪ではないという、微妙なラインといえるだろう。

硬貨にいたずらする行為は?

 ちなみに、紙幣に落書きするのとは異なり、硬貨にいたずらをする行為は貨幣損傷等取締法という法律で禁じられており、明確に犯罪にあたる。この法律では「貨幣は、これを損傷し又は鋳つぶしてはならない」とし、「違反した者は、これを1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する」とある。

 具体的には、硬貨に穴をあけてペンダントにしたり、表面を削って傷つけたりするなどの行為である。中学生の頃、技術・家庭の授業をサボっている友人が1円玉をトンカチで叩いてプレスして遊んでいたが、これはれっきとした犯罪といえる。また、筆者の故郷では死者の棺桶に10円玉を入れて焼く風習が残っているが、やはり法的にはマズい行為といえよう。

 ただし、法律が適用されるのはあくまでも“現在も使用できる硬貨”に限られる。例えば、明治時代に発行された金貨を地金にするために潰したり、江戸時代の寛永通宝をペンダントに加工したりする行為は問題がない。基本的に通貨としての効力がなくなった硬貨であればどう扱おうと自由であり、偽物を作っても罰せられることはない。

 なお、昭和33~41年にかけて発行された100円銀貨は、硬貨に含まれる銀の地金の価値が、現在では100円より上回っている。そこで潰して地金にして儲けよう……などと考えてしまうが、それはご法度である。この年代の100円銀貨は現在も使える硬貨なので、犯罪になってしまうのだ。

 同じように、昭和26年の年号が刻まれたギザ10には、わずかながら金が含まれているという説がある。そこで、大量に集め、溶かして金を取り出そうと考えてしまうが、もちろんこれもNGだ。そもそも、含まれていてもごくわずかな量なので、さきの100円銀貨と異なり、まったく儲けにはならないといわれている。

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