完成度は「カメ止め」超え 「侍タイムスリッパー」を支えた「時代劇の聖地」と“兼業農家監督”の情熱

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「将軍」と「サムタイ」

 脚本はもちろん、撮影、編集、チラシやパンフレットの制作や車輌まで、10以上の役を務めた安田淳一監督(57)は、映画と米作の兼業農家。映画の資金作りのため、愛車のホンダ・NSXも売却したという。

「助監督や制作、小道具を務めた沙倉ゆうの(46)は劇中で助監督役も演じていますが、東映京都俳優部に所属する俳優です。スクリーンでは何とも言えない魅力を放っていて、今後はドラマでの起用も増えるでしょう」

 作品に関わったスタッフは10名ほどと、映画としては圧倒的に少ない。

「やはりコンテンツには監督とスタッフの情熱が欠かせません。最近のテレビドラマが面白くないのは、放送枠とスポンサーが決まっていて流れ作業で作っているせいだと改めて思い知らされました。TBSの『VIVANT』や『不適切にもほどがある!』、NHKの朝ドラ『虎に翼』が当たったのは、これを伝えたいという情熱が視聴者にも伝わったからでしょう」

 情熱といえば、アメリカで制作された配信ドラマ「将軍 SHOGUN」がエミー賞18部門を受賞した際に、主演でプロデューサーを務めた真田広之の挨拶も熱かった。

真田:これまで時代劇を継承して支えてきてくださったすべての方々、そして監督や諸先生方に御礼を申し上げます。あなた方から受け継いだ情熱と夢は、海を渡り国境を越えました!

「アメリカで日本の時代劇が認められたことはもちろんですが、真田さんは当の日本で時代劇がほとんど作られなくなっている懸念もあったのでしょう。その真田さんが時代劇を学んだのが東映京都撮影所です。3年前から始まった『将軍 SHOGUN』の撮影には、日本からもスタッフを呼んで、日本の時代劇づくりにこだわりました。当然、東映京都撮影所にもその話は伝わっていたでしょう」

 実際、「将軍」にも「サムタイ」にも関わっている東映京都撮影所のスタッフはいるという。

「アメリカで本格的な時代劇を作るというなら、本場の日本で本物の時代劇を見せつけてやろうという意気込みも、『侍タイムスリッパー』には込められているのだと思います。今年は“時代劇ルネッサンス元年”になるかもしれません」

デイリー新潮編集部

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