岸田前首相の強運ぶり 「高市氏の“異論”が不愉快だった」

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浅からぬ溝

 もともと岸田氏と高市氏との間には浅からぬ溝があるとされてきた。

 もっとも分かりやすいのは2022年12月、首相だった岸田氏を高市氏が後ろから「撃った」件である。

 この時、岸田氏が防衛費増額の財源として1兆円強を増税で確保する意向を表明すると、その方針に対して自身のツイッターなどで異を唱えたうえに「閣議決定をしたものに反したわけではない。まだ、自由に議論できる段階だ」「閣僚の任命権は総理なので、罷免されるのであればそれはそれで仕方ないという思いで申し上げた」と閣議後の会見で述べている。

「首相にケンカを売るような振る舞いで、閣内不一致と指摘されても仕方ないものでした。高市氏自身、デフレからの完全脱却を指向している中で、首相の増税方針は企業の賃金上昇マインドを冷やしかねないとの思いが強かったのでしょう。高市氏の考え方のベースには安倍晋三元首相によるアベノミクスがあるのは明らかで、首相としては不愉快だったのは間違いないようです」(同)

 石破氏が安倍元首相や麻生元首相らに嫌われた理由としてよく挙げられるのが「後ろから銃を撃った」というものだ。しかし高市氏もまた閣内にいながら首相の方針に公然と異を唱えていたのは事実。

 岸田氏としては、政策の違いはもちろん、心情的にも深い溝があり、それを引きずってきたということなのだろう。

解散総選挙で自公は現状維持も

 岸田派は派閥解散前には党内で4番目の勢力で影響力を行使するには心もとないとの指摘もあったわけだが……。

「自らサプライズ風に解散を宣言した派閥ではありますが、今回の総裁選で旧岸田派は一致結束して動いていました。党内基盤が極めて弱い2人が決選投票に残ったことで、キャスティングボードを握ることができたのもラッキーでした。キングメーカーというのは結果的にそうなることはあっても自ら望んでなるということはないわけですが、今回の岸田氏は珍しく望み通りにその座に収まったケースだという印象がありますね。政策をある程度受け継ぐとされる石破氏の政権運営次第では、自らの果たした役割や実現した政策にあらためて光が当たり、評価されるとの狙いもあるのでしょう」(同)

 近く行われる解散総選挙で自公は現状維持も想定されているという。首相としては無念の退陣を強いられた岸田氏は、新キングメーカーとして幸先のよいスタートを切ることができるだろうか。

デイリー新潮編集部

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