声優グランプリ、巨人ファン貸切列車…開業60周年・東海道新幹線「成長」の歴史 「速さ」一辺倒から「楽しさ」「推し旅」追求へ

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1人でも多く、1本でも多く

 100系で二階建てグリーン車や個室が登場すると、1987年にJR東海が運営を引き継いで急ピッチでサービス向上が図られる。1991年に「のぞみ」をデビューさせて最高速度を時速220キロから270キロに50キロ引き上げ、最高速度の遅い0系と100系を置き換えていく。

「のぞみ」の登場で東京~新大阪の所要時間は最速2時間30分となり、国鉄時代の「東京~新大阪3時間」の常識を塗り替えた。今では昭和の「ひかり」の所要時間すら長く感じる。

 1990年代から2000年代初頭までは最高速度によって種別が分かれていて、時速220キロの「ひかり」「こだま」は主に0系と100系、時速270キロの「のぞみ」にはもっぱら300系と700系、JR西日本の500系が任にあたった。

 もっともこの体制は過渡期であり、2003年に品川駅が開業すると最高時速270キロ以上の車種で統一され、「のぞみ」中心のダイヤに移行した。また100系にあった二階建て車両や個室も全て撤退した。1980年代後半から2000年代序盤までは、JR流のサービスを定着させていく時期にあたるだろう。

 2007年に最高時速を285キロに引き上げたN700系がデビュー。その後は同系をベースにしたN700A、N700Sの増備が続き、2020年春の700系撤退をもって、東海道新幹線はN700系ベースの車両で統一。これで1時間あたり最大12本ののぞみの運転が可能になり、昨年8月11日には史上最多の471本の列車を1日で運行した。

 1人でも多く、1本でも多く――これが、JR東海が発足以来、是としてきたことで、2000年代中盤からのおよそ20年間は特にその実現に費やされた。

 ところが2020年代以降、JR東海は前述のようなバラエティ豊かなコラボ企画に打って出る。発足以来追求してきた列車高速化の技術はN700シリーズで一応の完成を見ており、近年は車内サービスの多様化に軸足を移していた。N700Sで全席にコンセント設置が実現し、特大荷物スペースや専用座席を導入して、帰省客や外国人のニーズにも応えている。

 テレワークの浸透にともなって、2021年からは普通車の7号車をS Work車両として、テレワーク向きの環境を整える。3席座席を仕切って2席としたS WorkPシートという区分も生まれ、10席限定ではあるが普通座席より1200円上乗せされただけの料金だ。テレワークに限らず予約さえすれば利用できるので、グリーン車よりお得な座席ともいえる。

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