ロシアが欧州へ「移民」「難民」を大量に送り込んでいる! 日本人記者が国境地点で見た「異様な光景」

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「ロシアにはお金さえ払えばビザを手配してくれる大学が」

 ベラルーシとの国境近くに拠点を構え、移民・難民たちを支援する団体「ベズクレス財団」の理事マリアンナ(43)=仮名=がため息交じりに語る。

「今や状況は一変しました。社会からの支えが目に見えて減り、資金集めはもはや困難です。SNSには支援者の殺害を呼びかける身の毛もよだつような投稿まであります」

 そこにはウクライナ侵攻も大きく影響している。

「私が会ったアルジェリア人一家はロシアで暮らしていましたが、ロシア軍の召集令状を受けて慌てて逃げ出してきました」

 支援団体のもとで難民申請の結果を待つアフガニスタン人女性ヒラ(18)=仮名=も、ロシアから来ていた。彼女の証言は「密入国システム」の一端を示すものだった。

「ロシアにはお金さえ払えばビザを手配してくれる大学がたくさんあって、大勢のアフガン人が学生ビザで来ていました」

 実母が病死し、イスラム主義組織タリバン政権下で学校に通うこともできなくなった彼女は21年、義父に借金の形として身売りに出された。すきを見て逃げ出し、ロシア大使館で学生ビザを取ってモスクワに逃れた。

「再び見つけたら射殺する」

 だが、ビザも切れ、不法滞在になったところで欧州への密航を請け負う人物の連絡先を知った。指示に従って120米ドル(現在のレートで約1万8000円)を送金すると、23年5月、ベラルーシの首都ミンスクに連れて来られた。「小川を渡れば3~4日でドイツに行ける」という触れ込みだった。

 十数人のグループで国境の森に入ったものの、すぐに遭難し、ベラルーシの国境当局に見つかって拘束された。そして国境フェンスのそばに連れて行かれ、当局者に掘削道具を渡され、こう告げられた。

「午前2時が過ぎたらフェンスの下を掘れ。ベラルーシの森で再び見つけたら射殺する。戻ってくるな。国境を越えろ」

 地中に固いものが埋め込まれていて掘ることができなかった。雨の森で立ち往生している間に水も食料も尽きた。グループで話し合い、はしごをつくってフェンスを越えることになった。フェンスによじ登った瞬間、ヒラはポーランド側に転落し、背中から落ちて意識を失った。マリアンナの仲間に救助されて約2カ月間入院した。

 背中や足に金属板を埋め込む手術を3回受けたが、今も腰回りの感覚はないという。

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