完全に誤解していました…パラ金・小田凱人の「カッコ良すぎるオレ!」発言には狙いがあった
「パフォーマンス」に込めた狙い
彼が育ったのは、テレビがなく、壁の仕切りもなく、家族の誰がどこにいるのか一目瞭然という、かなり変わった家。家風も自由。ゆえに幼少時より「あれ? うちって他とちょっとズレてる?」「僕って普通じゃないのかな?」と思うところが多々あったという。
しかし、ズレはズレのまま、「面白いからそれでいいや」と、その感覚を楽しんでいた。他者との違いを全くネガティブに捉えないこの原体験が礎となり、最終的には「ズレだと思っていたものは、その人にしかない魅力だ」と気づいたという。
9歳で骨肉腫により左足の機能を失い、サッカー選手の夢を諦めた際、医者から教えられた車椅子テニスの存在。映像を見て、すぐに「カッコいい!」「車椅子で走りたい!」「ボールを打ちたい!」という衝動に駆られる。その後、落ち込んだり悩んだりするヒマなく、一直線に車椅子テニスにのめりこんだという。
無理してそうしているわけでなく、とにかく思考回路の全てがナチュラル・ボーン・ポジティブ。原動力は好奇心で、自分のことが大好きと胸を張る。失敗しても自己嫌悪にならないのは、自分に期待をしていないから。まだ成長途中の自分には、できないことがあるのが当たり前。そのできないことを、どうやって挑戦しクリアしてやろうか、考えるだけでワクワクして、いつの間にか体が動いてしまうという。
スポーツ選手であると同時に、自らを「エンターテイナー」と捉え、試合でガッツポーズを取ったり大きな声で咆えたり、ラケットをギターに見立てて弾くなど、パフォーマンスでも魅せるのが信条。自分を奮い立たせると同時に、見る側を楽しませたいという思いがあるのだが。ジュニア時代、そうした行為が「威圧」に当たると、相手側から抗議が来たことがあったという。海外の大会では、それが当たり前だったので、めげずに貫いていたら、徐々に同じようにパフォーマンスをする選手が出て来て、「静か」だったそれまでの日本の車椅子テニス界に一石を投じることができたと振り返る。
「応援ありがとうございます」は言いたくない
プレースタイルについても同じ。「前に出る」という、今までの車椅子テニスではありえない戦法が、目指した当初は物議を醸し、実際失点も多かった。だが決して妥協せず、自らが目指す「カッコいいテニス」を追求し続けた結果、キャリアゴールデンスラム達成まで、あと全米オープンを残すのみというところまで昇りつめた。
ここまで来たのは、自分をコントロールする能力が秀でているからだと自己分析。よく、メンタルが強いと言われるが、人と比べて特にメンタルが強いわけではない。それを操るのが上手いだけだという。焦ったり、自己嫌悪に陥ったり、マイナスに引っ張られがちな時でも、常にポジティブ思考に戻せることが、試合だけでなく、人生全てにいい影響を及ぼすのだそうだ。
「自分は今までどこにもいなかったキャラクター、だから受け入れる側には常に戸惑われる」という自覚もある。取材でよく「国枝さんについてどう思いますか?」と質問されるが、思ったまま「倒すべき相手です」と答えると「尊敬してます」「憧れです」というワードを期待している相手に戸惑われたと回想する。でもこれは、自分なりのリスペクトの表現。そして「相手の予想の枠に収まるのが嫌」という気概の表れでもある。
「応援ありがとうございます」的な、お決まりのフレーズは口にしたくない。自分らしさを出したくて、あえて派手で目立つことを口にしてしまうのだと。それが前述の「カッコ良すぎるオレ!」に繋がっているということなのだ。
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