最速大関「大の里」に見えた横綱昇進への課題 独走を許した「稽古不足」の先輩大関とは?【音羽山親方の秋場所総括】

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横綱、大関陣に絶対的な強さがない

――今場所は横綱・照ノ富士関は全休でしたし、つねに優勝戦線を引っ張る存在がほしいところですよね?

音羽山:そうです。今は、横綱、大関陣に絶対的な強さを誇る力士がいないんですよ。コロナ禍もあって、ここ数年は積極的な出稽古ができなかったツケもあると思うのですが、私が所属する時津風一門(時津風部屋、伊勢ノ海部屋、追手風部屋、荒汐部屋、音羽山部屋)では、連合稽古が復活しました。

 今場所は、全勝の大の里に勝った若隆景(荒汐部屋)が12勝で殊勲賞を受賞。34歳、ベテランの錦木(伊勢ノ海部屋)も優勝戦線に絡む活躍で敢闘賞を取ったほか、若隆景の兄、若元春(荒汐部屋)も11勝。霧島(音羽山)も12勝で連合稽古の成果が出ているんじゃないかな……と思っています。

尊富士は一気に幕内に上げたほうがいい

――十両の土俵に目を向けると、春場所、幕内で初優勝を遂げたものの、ケガのために番付を下げていた尊富士関が13勝2敗で十両優勝を果たしました。

音羽山:十両の土俵では力が違っていましたしね。スピード感もあって、幕内最高優勝した当時を思わせる軽快さです。十両11枚目という地位ですから、九州場所の番付は十両上位に止め置かれる可能性もありますが、十両での実力は十分なので、ここは一気に幕内に上げちゃったほうがいい(笑)。そのほうが、場所の展開が面白くなるし、ファンの方も喜ぶんじゃないですか?

 あと、新十両だった大青山は、今後、見逃せない存在です。今場所は7勝8敗と負け越してしまいましたが、191センチ、160キロの均整の取れている体が魅力です。これから変な太り方をしないで、技を身に付けていけば、早い段階で幕内に上がってくると思います。

真剣勝負はファンの心に響く

――楽しみですね! さて、今場所は枝川審判(元前頭・蒼樹山)の代行として、12日目から土俵下で勝負審判を務められましたが、いかがでしたか?

音羽山:不思議な感覚というか、土俵下から間近で取組を見て、初心に返った気持ちです。この秋場所も初日から千秋楽まで、満員のお客様に土俵を見守っていただきました。真剣勝負はファンの方の心に響きます。10月1日からは東京都足立区を皮切りに秋巡業が始まりますので、各力士は課題を持って稽古に励んでほしいと思っています。

武田葉月
ノンフィクションライター。山形県山形市出身、清泉女子大学文学部卒業。出版社勤務を経て、現職へ。大相撲、アマチュア相撲、世界相撲など、おもに相撲の世界を中心に取材、執筆中。著書に、『横綱』『ドルジ 横綱朝青龍の素顔』(以上、講談社)、『インタビュー ザ・大関』『寺尾常史』『大相撲 想い出の名力士』(以上、双葉社)などがある。

デイリー新潮編集部

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