最速大関「大の里」に見えた横綱昇進への課題 独走を許した「稽古不足」の先輩大関とは?【音羽山親方の秋場所総括】
「悔いはない」の言葉に少し救われた
――大関昇進のおめでたい話題の一方、元大関で今場所は関脇に下がっていた貴景勝関が28歳の若さで現役引退を発表。今後は湊川親方として、後進の指導にあたることになったのは残念でした。
音羽山:貴景勝の首のケガは、だいぶ重症でしたからね。あれだけのケガの中で大関を30場所も張ってきて、さらに悪化させてしまったら命にかかわるところでしたから、引退は仕方ないことだと思います。
本人は小学生の頃から横綱を目指してがんばってきたけれど、先場所は5勝。今場所も2日目まで相撲を取って、最後の相撲が高校の後輩で元付け人の王鵬だったというのも、何かの縁ですよね。目標を達成することができないという現実を前に、「もういいかな……」と感じたのだと思います。
もちろん、悔しさはあったと思います。でも、引退会見での「燃え尽きました。土俵人生に悔いはありません」という言葉に、少し救われた気がしました。
振るわなかった大関2人
――さきほど親方もご指摘された2大関、琴櫻関、豊昇龍関がいずれも8勝(7敗)という成績で、物足りなさを感じました。
音羽山:豊昇龍に関しては、明らかに稽古不足です。8月の夏巡業は、後半の数日のみの参加でした。豊富な稽古を積んで大関に上がってきて、稽古が嫌いなタイプじゃないと思うのですが……。
今場所の彼の体を見ると、体重を増やしたために動きが鈍くなっていますね。私の部屋の霧島もそうなのですが、横綱を目指すためには2人とも体重が若干足りないんですね。それで、霧島も体重を増やしたために、3月の春場所で負け越し、5月の夏場所は途中休場して、大関から陥落してしまった。そうした反省を生かして、今場所の霧島はようやく自分を取り戻して12勝を挙げました
琴櫻に関しては、初日から4連勝といいスタートを切ったのですが、途中から失速。前回の総括の時も指摘しましたが、優勝の目がなくなると、気持ちが前向きになれないという心の部分を治してほしいですね。
[2/3ページ]