「あの打ち方をできるのは、投手だから」 大谷翔平の異色のバッティングの秘密とは? 10代の頃の大谷に相談を受けた専門家が解説
陸上選手のような走り方を体得
川村教授はそう指摘しながら、
「打者は通常、体全体の質量を高めたほうがパワーも生まれるので、胸筋も強化しようと考えます。一方で投手は、胸や背中の筋肉を硬くしすぎると腕がしならなくなるため、肩甲骨が滑らかに動き、それに合わせてついてくる腕の動きを妨げないよう胸郭にも柔軟性があることが望ましい。打撃においても、ミート後にボールをバットに乗せて押し込む際、肩甲骨が広く動いたほうがよいのです。大谷選手のインパクト時の『五角形』は、投手でもある彼が柔軟性を保ちながら肉体改造してきた証しだといえます」
その「肩甲骨」は、実は走塁においてもポイントに挙げられるという。
「大谷選手は盗塁の時、少し前足(右足)を引き、進行方向とは反対に動かしてからスタートします。前足を引くことで体は前方に倒れ、その作用でうまく角度を作り、前傾したまま左足で蹴り出す力を増幅させて推進力が生まれる。実に効率的です。また走る時に肩甲骨を使うことで腕が横に振れ、体幹がブレて力が分散してしまう選手が多い中、彼は今春のトレーニングの時から、肩甲骨を使わないことで体幹がブレずに進む、陸上選手のような走り方を体得していました」
野球評論家の高木豊氏も、
「私の現役時代も、盗塁の時には上体がブレないこと、つまり構えた位置から上体を動かさずにスタートすることを心がけてきましたが、大柄でストライドが長いにもかかわらず、俊敏な動作もこなせる大谷は別格だと思います。また日本に比べてMLBの投手は、投球間隔に間合いを取らず、一定のリズムで投げたがる傾向がありますが、彼はそんなリズムを盗む能力にも長けていますね」
そう感嘆するのだ。
「MVP受賞は妥当」
大谷はこれまで、21年と23年にア・リーグMVPに輝いており、今回はナ・リーグ移籍1年目にして受賞の可能性が高まっている。これまでメジャーではDHがMVPを受賞した例はないのだが、メジャーリーグ研究家の友成那智氏いわく、
「受賞は順当でしょう」
というのも、
「毎年9月の第1週に、米国最大のスポーツネットワーク『ESPN』の選りすぐりの野球担当記者18人が、MVPをはじめサイ・ヤング賞候補選手などを予備投票で選ぶのですが、今回は18人全員が、ナ・リーグMVPに大谷を推しました。この結果は、11月のMVP選出(同じく記者投票)でも同じ傾向が見られるため、よほどのことがない限り、結果は覆らないとみられます」
もっとも、現地で取材を続ける「Full-Count」編集部の小谷真弥氏は、
「本人は、50-50やDH初のMVPは一つの通過点に過ぎないと捉えているように見受けられます。直近でも『あとで振り返ればいい』と発言するなど、こだわりは感じられない。記録よりチームが勝ち切り、至上命令であるワールドシリーズの制覇を最優先しているのだと思います」
さらに、期待は膨らむと言うのだ。
「来季の登板に向けてリハビリが続いており、すでにブルペン練習では150キロの球を投げるまでに回復している。今月中には打者を立たせてマウンドから投げる、いわゆる実戦投球も始まる予定です」
前編【「打ち損ないでもレフトスタンドに」 大谷翔平のバッティングはどこが変わったのか? データから徹底分析】では、大谷翔平のバッティングが向上したポイントについて、専門家の見解を紹介している。
[3/3ページ]