ヒズボラ攻撃の口火を切った「ポケベル爆弾」 イスラエルのダミー企業が製造・販売の衝撃…専門家は「歴史に残る驚異的な秘密工作」
映像分析で見えた真実
17日の報道内容を把握し、イスラエルがヒズボラにサイバー攻撃を仕掛けたと受け止めていた人も多かったはずだ。ところが突然、『ポケベルもトランシーバーも物理的に爆発した』と報道内容が変わってしまった。これには戸惑った読者も相当な数に達しただろう。
軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は17日にポケベルが爆発した時点で、「これはサイバー攻撃ではなく、物理的な爆発だ」と分析していたという。
「確かにポケベルも立派な情報機器ですから、マルウェアを使ったサイバー攻撃を仕掛けることは可能です。しかし、もしバッテリーが異常加熱したら、爆発ではなく発火するほうが普通です。よく電車の車内でモバイルバッテリーが発火し、乗客が火傷したというニュースが報じられます。ヒズボラのメンバーも、あれと似た状況になったはずです。ところがメンバーがケガを負った瞬間を捉えた動画が配信されると、文字通りポケベルは爆発していました。これはバッテリーが原因ではなく、何らかの爆発物が仕込まれた可能性が高いと分かったのです」
さらに決定的だったのはニューヨーク・タイムズが9月19日、「どうやってイスラエルはポケベルを爆発させる機能を備えた、現代版トロイの木馬を開発したのか(How Israel built modern-day trojan horse equipped for exploding pagers)」との記事を配信したことだ。
信憑性の高い記事
「この記事はCIAの情報を元に書かれています。世界各国のメディアがCIAの関係者に取材を行っていますが、事実関係が最も正確な記事を出稿するのはニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストの2紙です。他メディアの追随を許すことはなく、例えばウォール・ストリート・ジャーナルもCIAの取材結果を元に記事を配信することがありますが、往々にして信憑性を疑問視されます。CIA側も確度の高いネタはタイムズとポストにリークし、確信の持てない情報を他のメディアに流す傾向があるようです」(同・黒井氏)
見出しにある「トロイの木馬」はマルウェアの代表例としても知られている。そのニュアンスも含まれているのだろうが、やはりこの場合は本家本元であるギリシア神話の「トロイア戦争」を下敷きにしたもののようだ。
ご存知の通り、ギリシア軍は巨大な木馬の内部に多数の兵士を隠し、敵であるトロイアの城壁外に放置。ギリシア軍が退却したと喜んだトロイアの人々は城の中に木馬を運び入れてしまう。そして深夜に木馬から出た兵士が城門を開き、駆け付けた援軍と共にトロイアを滅亡させたというエピソードだ。
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