今年度でPTA会員がゼロに…解散を決めた「岡山県PTA連合会」会長が苦悩を明かす 会費は4倍に値上げ、重過ぎる人的負担に批判も

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中央への上納金に大批判

 もう一つ、退会理由の中に「会費問題」があったことも見逃せない。

「岡山市と倉敷市が抜けた後の2016年に、会費を100円、値上げしました。この値上げにより、県に納める会費の割合が増え、市町村でやりたい活動ができないと、大きな批判があったことは確かです」

 1人当たり30円から130円にアップしたわけだから、実に4倍以上の値上げだ。

「単位PTA」で徴収されるPTA会費には、自動的に上部組織(市町村・都道府県・全国)への会費が含まれている。子どものためにと払っているPTA会費から、会員は自動的に上部団体へも費用を収めているわけだ。「都道府県P」はピラミッドの頂点にある「日P」に会員一人当たり10円を納めている。単純計算で720万人×10円=7,200万円が、「日P」の年間収入となる。しかし、昨年度は「日P」の元参与が、修繕費30万円を2,000万円として水増し請求をした「背任容疑」で逮捕されるなど、杜撰な会費の使途が明らかになっている。

 神田さんによれば、「県P」が「日P」から退会したということは、自動的に「日P」への会費負担も無くなるそうだ。「県P」も来年3月で解散するため、これにより、来年度以降、岡山県内のPTA会員の会費はすべて「市町村 P」と、各学校のPTA活動を担うものとして使われる。使途不明のものに利用されることはないと、内心、ほっとする保護者も少なくないだろう。

 実は解散には、岡山県ならではの事情もあった。

「岡山県は、岡山市や倉敷市が早い時期に抜け、退会できるという前例が身近にあり、県P連として大きく変化していけなかった中で、退会という選択肢が常に検討されるなど独自の歩みがあったと思います。県Pを退会して、市町村でやっていこうという。歴史ある組織を解散するのは苦しい決断でしたが、組織の実が伴わない状況である以上、自分が責任を取るしかない、ということです」

 どれほどの苦渋の決断だったか、神田さんの苦悩ははかり知れない。今回の「岡山県P」の解散によって、日P(や都道府県・政令指定都市P)などの上部組織が、下部組織から存在意義を疑問視されている現状が、白日の下に晒されたことは間違いない。この流れが、岡山県のみで止まるとは私には思えない。実際、昨年は東京都小学校PTA協議会、今年に入っても千葉市とさいたま市のP教が日Pから退会している。奈良市や高知市小中学校など、市町村のPTAにも県Pから退会する動きが相次いでいる。PTAは果たして、このままでいいのか。変わるべき時、あるいは存在の必要性を含め、改めて考えるべき時に来ているのかもしれない。

黒川祥子(くろかわしょうこ)
ノンフィクション・ライター。福島県生まれ。東京女子大学卒業後、専門紙記者、タウン誌記者を経て独立。家族や子ども、教育を主たるテーマに取材を続ける。著書『誕生日を知らない女の子』で開高健ノンフィクション賞を受賞。他に『PTA不要論』『8050問題 中高年ひきこもり、7つの家族の再生物語』『シングルマザー、その後』など。雑誌記事も多数。

デイリー新潮編集部

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