今年度でPTA会員がゼロに…解散を決めた「岡山県PTA連合会」会長が苦悩を明かす 会費は4倍に値上げ、重過ぎる人的負担に批判も

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上意下達の組織運営

 そもそも、「県P」という組織の役割とは何なのか。日本におけるPTAの組織は、見事なピラミッド型となっている。頂点に位置するのが「日本PTA全国協議会(日P)」で、その下に、岡山県PTA連合会も所属する「都道府県・政令指定都市の協議会・連合会」が位置し、さらにその下に「市町村の協議会・連合会」があり、PTAピラミッドの最下層に、子どもに直結する「単位PTA」と呼ばれる、「小中学校のPTA」がある。会員数は約720万人で、PTAは日本最大規模の公益社会法人でもある。

 神田さんは「市町村P」の会長から、「会議の運営が、一方通行」という批判を浴び続けてきたわけだが、「県P」に振られた役割からすれば、やむを得ないものでもあった。神田さんはこう語る。

「県Pの役割は、日Pからの情報や動向、他の県や教育委員会からの情報などを、市町村に伝えるということです。よく市町村から言われましたが、『それなら、資料で間に合うのではないか』と」

 わざわざ、「情報伝達」のために時間やお金を割いて「会議」を開く必要があるのか――。「県P」のあり方への正面からの疑問だった。

 では逆に、「単位PTA」から成り立つ「市町村P」の声を、「県P」が上部組織である「日P」へ届けていくという、下からの動きを吸い上げる役割はあったのだろうか。神田さんは「国」どころか、「県」に対しても、その意向はなかったと率直な思いを語る。

「岡山県や県の教育委員会への要望は、私が会長になった時にはやられていないことでした。そうなった経緯はわからないのですが、むしろ市町村としては県に要望するより、市町村に要望すれば、それで事が足りるわけです。改めて思えば、『県P』として、県に予算の確保や教員の働き方改革など、要望としてやれることはあったのかもしれません」

国の教育方針の伝達が役割

 日Pの発行物によれば、PTAそれぞれの組織の関係は「上下」ではなく、相互交流的な「横並び」の独立した機関として謳われている。しかし、神田会長の証言から浮かび上がるのは、日Pを頂点、単位PTAを最下層とした、上から下へのトップダウン体制が組織に色濃く残っているという内実だ。

 筆者は6年前、『PTA不要論』(新潮新書)という著書を出版した。その際、「日P」へも取材を行ったが、当時の専務理事はPTAの役割についてこう断言していた。

「我々の最も重要な役割は、国の教育方針を伝えることです」

 歴史を紐解けば、PTAは決して末端の保護者や教員の必要性に応じて生まれた組織ではなく、国主導で作られた「社会教育団体」であることがわかる。PTAがなぜピラミッド組織を必要とし、その始まりから、上意下達組織を構築したのかといえば、スムーズに国の教育方針や意向を、上から下に隈なく届けるために効率が良かったからだろう。逆に、国の教育方針に「日P」が賛同すれば、「単位PTA」720万人会員の了承を得たと言い切れるシステムにもなるわけだ。PTAはその成り立ちからして、ピラミッド型の上位下達組織が想定されていたものだった。

 しかし、PTAの発足から70年余りが立ち、保護者の生活スタイルも社会意識も様変わりしている。現代の保護者が、上意下達、一方向的な運営の組織に、時間やお金を割いてまで協力する魅力を感じないであろうことは、明らかであろう。

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